大町市美麻に、念願の土地を手に入れました。
眺望は抜群なのですが、放置された畑が荒れた松林に変わってしまった雑種地で、木を伐採するところから手を付けなければならず、前途多難です。
途方に暮れてばかりいても仕方ないので、森林のエキスパートであるスガヤさんに、伐採の際のアドバイスを仰ぐことにしました。
スガヤさんは「シニア海外ボランティア」として、ブラジル・サンパウロの桜再生プロジェクトに参加、彼を訪ねて
南米に渡った私は、楽しい思い出とともに(過去記事)>>>
何歳になってもチャレンジを続ける姿勢に感銘を受けたものです。
そして今日もまた、私は大きく感化されました。
スガヤさんと現地調査をしながら、「ここは広葉樹の森にしよう」「来年の秋は、カエデの紅葉が待ち遠しい」と考えるようになり、何だかウキウキしてきました。
スガヤさんを待ちながら、タメ息をついて見上げていた雑木の山が、別れるときには、かけがえのない宝の山に見えるようになったのです。
私の視点と考え方を変えてくれたことに感謝するとともに、「頭のいい人っていうのは、こういう人のことを言うんだな」と、感じ入った次第です。
頭のいい人は、知識が豊富だ
木を一目見るなり、次々と名前と特徴を言い当てます。
木に関するトリビアも豊富。
「あの松の樹齢は、どのくらいなんでしょう?」と訊く私に、「切り倒して、年輪を数えればわかるよ」なんてことは、もちろん言いません。
マツやモミなどは、1年に1段ずつ規則正しく枝を伸ばすので、枝の段数を数えることで樹齢を知ることができるとのこと。
また、「地上から1メートルの幹周を2.5で割る」ことでも、おおよその樹齢がわかるとのこと。
例えば、幹周が120cmの木であれば、120cm ÷ 2.5 で、樹齢およそ48年。
「ヒノキ」と「サワラ」は、ともに「ヒノキ属ヒノキ科」で、よく似ています。
葉っぱを裏返して、白い文様が「Y」に見えたらヒノキ (左)、「X」に見えたらサワラ (右)。
混同しないよう、「卑猥(ヒワイナ)なこと言わないで!」「エッチ!サワラないで! (XがHにも見えるため) 」と覚えるのだそうだ。
頭のいい人は、判断の根拠が明確だ
購入した土地は、数メートル下に市道が隣接しており、道路との間は法面になっています。
この法面にもカラマツが生えているため、伐採の承諾を市役所から取り付けようと思っているのですが、「木の根がなくなることで法面が崩れる可能性があるため、伐採してはいけません」と断られるだろうなあ、と半ば諦めています。
ところがスガヤさんによると、「カラマツは根が浅いので、背が高いわりに細い木は、風にあおられて倒壊する危険がある。切った方がよい」とのことで、180度異なる見解です。
なるほど、10m近い樹高なのに、根の深さは1mもありません。
市役所に対して、「切らせてください」ではなく「切ってあげるよ」との、デカい態度で交渉に臨めそうです。
「森林は地盤崩落を防いでいる」との、漠然としたイメージではなく、対象物をケースバイケースで科学的根拠に基づき判断すること、その重要性を学びました。
本当に頭のいい人は、知識を生活に活かす
膨大な知識を持っていても、それだけでは単なる物知りに過ぎません。
本当に頭のいい人とは、インプットした知識を情緒的に処理したうえで、アウトプットできる人のことではないでしょうか。
「マツ科マツ属の常緑針葉樹、樹高30mの赤松」という感情を持たないデータに、「あの赤松は遠くからも見えるから、シンボルツリーにしよう」という絵画的な発想を加え、生活の中に取り込むことができる人。
つまりは理系・文系、両方の才能に長けている人ですね。
そういえば先日、次のような質問をネットで目にしました。
女性にとって、もらって一番うれしいプレゼントとは?
(この質問に対する、ある女性の回答)
プレゼントは「これが欲しい」と素直に言ってしまう私ですが、「欲しい」と言いにくく、もらうことも難しいなと感じているのは、具体的な言葉です。
「好き」や「愛してる」の先にある、もっと具体的な言葉のことです。あなたが私をどんな風に愛しているか、です。
面倒くさいですよね。だから、普段は決して言わないのです。笑
私の知る限りで、これを最も上手くやる男性は、村上春樹です。
「君の着るものは何でも好きだし、君のやることも言うことも歩き方も酔払い方も、何でも好きだよ」
「本当にこのままでいいの?」
「どう変えればいいのかがわからないから、そのままでいいよ」
「私のこと好き?」とミドリが訊いた。
「好きだよ」
「どれくらい好き?」
「春の熊くらい好きだよ」
「春の熊?」とミドリが、また顔を上げた。「それ何よ、春の熊って?」
「春の野原を君が一人で歩いているとね、向こうからビロードみたいな毛なみの目のくりっとした可愛い子熊がやってくるんだ。そして君にこう言うんだよ。
『こんにちは、お嬢さん。僕と一緒に転がりっこしませんか』
そして君と子熊で抱き合ってクローバーの茂った丘の斜面をころころと転がって一日中遊ぶんだ。そういうのって素敵だろ?」
「すごく素敵」
「それくらい君のことが好きだ」
ミドリは僕の胸にしっかりと抱きついた。「最高」と彼女は言った。
最高です。
キザだとは思いません。自分の言葉に置き換える手間を惜しまない、ということです。現実には、これほどの上手さは求めていませんよ。
ただ、女性を「可愛い」とか「好き」と感じたときに、もう一言説明を加えて、具体的な表現にして伝えると喜ばれることが多いのではないかなぁと思います。
…とのことです。はぁ、そうですか。
村上春樹の才能は、「対象を言語化する」文系力の極致ですね。
ここに「対象を数値化する」理系の力を加えて、数量と表現の世界を行ったり来たりしつつ、どんどん細密な深い部分に潜っていける才能を身につけたら、レオナルド・ダ・ビィンチになれるわけですね。
いきなりダ・ビィンチにはなれないので、まずは地道に、知識量を増やしていくところから始めることにします。
「あの、きれいに紅葉している木」と言うよりは、「3m先にある、もみじ色のコミネカエデ」と表現した方が、たしかに頭よさそうです。
今日、スガヤさんに教えてもらった樹木の種類を、確実にインプットするところから始めます。
コミネカエデ
- 名の由来は「ミネカエデ」に似ていて、花が小さいため。葉が小さいわけではない。
- 黄色に色づくミネカエデに対し、赤く紅葉する。
- 渓流沿いに生えることが多く、梓川が流れる上高地には多く見られる
- 6m~8mになり、樹皮は灰褐色で滑らか。縦縞の模様がある。
コハウチワカエデ
- 葉は切れ込みが浅く、小さな手の平のような、丸みを帯びた優しいフォルム。鋭利な葉が、凛とした上品さを感じさせる「イロハモミジ」とは趣が異なる。
- 5m前後の樹高に留まるおとなしいカエデで、生育に伴い下枝をどんどん減らしていく為、人の背の高さまでは幹だけとなる樹形を活かし、アプローチや玄関周りなど、住宅のシンボルツリーとしても利用される。
- 高木の枝下で点々と自生するので、強い直射や強風にさらされる事には慣れていない。
ホウノキ
- 名の由来は、殺菌作用もある大きな葉に、食べ物を包んだことから。
- 樹高30 m、直径1 m以上になるものもある。
- 樹皮は灰白色、きめが細かく、裂け目を生じない。
- 葉は大きく、長さ20 cm以上、時に40 cmにもなり、葉の大きさではトチノキに並ぶ。
- 花も大型で大人の掌に余る白い花が、輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かって開花する。白色または淡黄色、6月ごろ咲き芳香がある。
- 材は堅いので下駄の歯などの細工物に使う。また、水に強く手触りが良いため、和包丁の柄やまな板に利用されたり、ヤニが少なく加工しやすい為、日本刀の鞘にも用いられる。
- 樹皮は生薬にする。
- アイヌ民族は種子の煎じ汁を、茶のように飲用した。
樹皮が緑色の「キハダカエデ」と「ミズキ」
- ミズキは、早春の芽吹き時、地中から多量の水を吸い上げることが名の由来。
- ミズキの枝は横にしか伸びないため、階段状の独特の樹形を展開する。
- ミズキは、花木として人気の高いハナミズキの仲間だが、花色は控えめ。しかし、開花期(5月~6月)に遠くから見ると、木全体が白っぽく見えるほど咲き誇る。
ダンコウバイ
- 樹皮は灰褐色で、楕円または円形の皮目が多い。
- クスノキ科の樹木は、枝を折ると芳香がする。和名「檀香梅」は、花が梅に似ていて、材がビャクダンのように香りがよいことから。
- 花言葉は、「永遠にあなたのもの」「私を見つけて」
クリ
- 語源は諸説あり、食料として古くから栽培され、果実が黒褐色になるので「黒実(くろみ)」、これが転じて「クリ」と呼ばれるようになったという説、クリとはそもそも石という意味で、実の硬い殻をクリと呼んだという説などがある。
- 英語名のチェストナッツ(Chestnut)は、いがの中の果実がいくつかに分かれている様子から、部屋の意味の Chest から命名されている。