東京で中央線に乗っていて、信濃町駅を通過するとき、私は、胸のときめきを感ずる。
神宮球場で行われる「ジャパン・スーパークロス」を思い出させるからだ。
スーパークロスとは、スタジアムに大量の土砂を搬入して人工的に作られた、1周1分程度の特設コースで争われるモトクロスレースのこと。
そのエキサイティングなレースに、私は完全に魅了されてしまった。
入場券を手に、スタンド裏の階段を駆け上がるときの気分といったら。胸がいっぱいで息苦しいくらいだ。
最初に、巨大な土の山が目に飛び込んでくる。コースに作られたジャンプ台だ。
スタートにそなえてエンジンを温めているマシーンの、甲高い音が重なり合い、焼けたオイルの香りが風に乗る。
その光景は、いつ見ても新鮮だった。
本当に、何度見ても新鮮で、古びるということがなかった。
私が初めてスーパークロスを観戦したのが、1987年の大会。
日本で初めて、「ウェーブ」の応援が起きたイベントでもある。
ドーム球場工事中の後楽園から神宮へと、会場を移して開かれた87年のスーパークロス。
4万5千人の観客で、神宮球場は埋め尽くされた。
おりしも、隣の国立競技場では6万4千人を集めて、アメリカンフットボールが開かれていた。
2つのアメリカンスポーツが神宮外苑に10万人以上を集客したことになる。
スポーツのニューウェーブは、F1 だけじゃない。
今年のスーパークロスの見どころといえば、日本で5勝を稼いでいるリック・ジョンソンと、今年の全米シリーズでリックを下し、チャンプをもぎ取ったジェフ・ワードとの対決。
これに、ヤマハへ移籍したばかりのミック・ダイアモンド、ロン・ラシーン、K・ボーエン、ガイ・クーパーなど、若手がどこまで迫るか。そして日本勢の成長ぶりは、というところにある。
トラック600台分の土を持って造られた 1周760mのコースのハイライトは、高さ 2.4m の山が 16m 間隔で並ぶダブルジャンプ。
これをアメリカンライダーは一気に飛ぶのはもちろん、その先の3連ジャンプの一つをも、一緒に飛び越えてしまう。
そしてもう一つのハイライト、LAギアジャンプは高さ2mほどのダブルジャンプ。助走距離が短いうえ、着地点が真直角の急コーナーなので、ここはさすがのアメリカンライダーも、一気に飛ぶのは半分くらいだ。
4ヒートに分かれる予選は、第一ヒートを制したデュバックの迫力ある走りで始まった。
第二ヒートはベテランのJ・オマラとダイモンド、クーパーのリードでスタート。
しかし、1周目のLAギアを揃って一気飛びした若手2人が着地で絡んで転倒。
8位まで順位を落としたクーパーが驚異的な追い上げでオマラを抜き1位。
続く第三ヒートは真打ちリックの登場。
一方のワードは、第四ヒートでワンマンショーだ。
飛距離の大きなジャンプはまったく危なげがなく、それをつなぐコーナリングも実にスムーズ。
すっかり暗くなった5時30分、カクテルライトに照らされて、いよいよ決勝22台のスタートだ。
最初のスタートで8番手と出遅れたリックだが、クラッシュによる再スタートではオマラに続き2番手。
早くも1周目にはこれをかわしてトップを独走する。
逆に9番手スタートと苦しいワードは、13週目にやっとダイモンドを抜き2位になった時には、リックに12秒近い差をつけられていた。
マシンを横に倒し、左腕を掲げてワンハンドでフィニッシュしたリックが、チェッカーフラッグを受けた。
日本勢では若手期待の、花田茂樹が大健闘の12位でフィニッシュ。


