そもそも揚げ物料理とは何ぞや、料理を科学の目で見てみましょう。
衣をつけた食材(タネ)を、熱々の油に入れることで衣の水分が蒸発し、代わりに油がその隙間に侵入します。続いてタネの水分も蒸発して水蒸気となりますが、衣に浸透した油が膜となり、揚げ物料理は外側がからっと、中はしっとりとした仕上がりになります。衣を付けない素揚げも同じように、食材の表面で水と油の配置転換がおこり、外はからりと、中は柔らかくふっくらと仕上がります。
食材を油に入れると勢いよく泡が出てきますが、衣から発生する水蒸気ということですね。水蒸気が発生する際、気化熱により油の熱が奪われます。油と水をそれぞれ加熱して同じ温度まで上げる場合、油は半分の熱量で済みます。逆にいえば、少しの熱量を奪われただけで、急激に温度が下がってしまいます。
したがって食材を入れすぎると、再び適温に温度が上がるまで食材は低温の油に浸かることになり、油を吸いすぎて油っぽい揚げ物になってしまいます。早く温度を上げようと火力をいじると今度は、温度が高くなりすぎて焦げてしまうこともあります。
油の適温を保って中まで火を通しつつ、短い時間で揚げたほうが仕上がりが良いので、入れる食材は油の面積の1/3から多くても半分までに抑えるようにします。
コロッケのような塊状のものより、かき揚げのような表面積の大きいもの、あるいはカキやえびといった水分を多く含む食材は、揚げるとたくさんの水蒸気を出して気化熱も多くなるので、一度に入れる量は特に控えめにしましょう。
次に食材ごとの油の適温を示します。 温度の見分け方として、水でといたころもを一滴、油の中に落とします。水の比重は油より重いため、落とした直後に水を含む衣は下に沈みますが、水分が蒸発して油と置き換わることで衣は軽くなり、浮き上がってきます。油の温度が高いほど水分が蒸発して衣が浮き上がってくるまでの時間が短くなります。
または、湿らせた木製の菜ばしを油に入れ、菜ばしの水分が蒸発して出す、泡の量でも判断できます。
| 低温(衣は底まで沈み、ゆっくり浮かんでくる) | 150~160℃ | ピーマンやししとうなどの緑色を残したいもの。さつまいもやれんこん、餅など、でんぷんを多く含むもの。でんぷんは火が通りにくいので、低温で長めに揚げる。 |
| 中温(衣は途中まで沈み、すぐ浮かんでくる。菜箸の先から細かな泡が出る) | 160~170℃ | 野菜のてんぷら、唐揚げ、竜田揚げ |
| 170℃ | とんかつ、かき揚げ | |
| 高温(衣は沈まずに油の表面で散る。菜箸全体から、ワーッと泡が出る) | 180~190℃ | 魚介類のてんぷら。魚・野菜のフライ。肉や魚などのたんぱく質は、長時間加熱すると硬くなるため、高温で短く揚げる。 |
「世界食道」のお隣さんは天ぷら屋さんなのですが、「美味しく揚げるコツは何ですか?」と、2代目となるマスターに尋ねたことがあります。
「天ぷらは油9割だよ。いい油さえ使えば誰にでも簡単にできるさ」と謙虚におっしゃっていたマスターでしたが、たしかに油は特上のゴマ油を使用していました。
ごま油はもともと風味がいいので精製度も抑えられており、揚げ物においてはコクが生きてきますが、精製度が低い分油切れも悪くなるので、ごま油2に対しててんぷら油 or サラダ油1を混合する方法も一般にはあるようです。
また、とんかつや串カツなどパン粉をつけるフライの場合、パン粉がバリバリと固くなり、食感もあまりよくないため、ラードやヘットなどの動物油脂を混ぜて、フライが冷めた際に油がちょうど衣の周りで白く固まり、しっとりとした食感になり、中の肉ともよくなじむともいわれます。フライが時間がたってもおいしいのは、動物油脂のおかげのようです。
ころもや粉をつけすぎると、なべの底に落ちて焦げ付き、油の質が低下してしまう原因となります。衣や粉はつけすぎない、揚げかすはこまめにとることで、油の質の持ちが長くなります。
使った油は熱いうちに濾しておけば、次もきれいに使えます。光・空気・熱で油は酸化しますので、冷暗所で保管しましょう。
油から食品を取り上げる際、食品を1センチ3秒くらい油面に触れさせると、表面張力で余分な油が流れます。
冷凍食品を使う場合、室温の油をナベにいれ、冷凍食品を入れてから火をつける方法も、少量の食品の場合は可能です。コロッケが油漬けになってしまうのでは?と心配になりますが、冷凍食品からの水蒸気が、油を外へ外へと押し出すので、大丈夫なのです。
熱い油に霜のついてしまった冷凍食品をいきなり入れると、油がハネて危ないですが、これなら大丈夫。
野菜の素揚げのコツ
1. 素材はよく冷やしておく
2. 水分をよくふきとる
3. 高温で揚げる
4. 一度に揚げすぎない
5. 素早く油をきる
6. 熱いうちに味を付ける