1月のネパール旅行のこと。
時間に余裕ができたので、突然の思いつきで、カトマンドゥから東へ約12キロに位置する古都・バクタプルを、バスで訪れた。
1泊して、朝食には名物の「王のヨーグルト」も味わい、「満足だ。さてカトマンドゥに帰るとするか」と、パンパンに張った腹をさすりながら大通りに出たのだか、行き交うバスのどれに乗っていいものか、皆目見当がつかない。
ネパールにはバス停らしきものはなく、走るバスから身を乗り出した車掌が、人が集まっている場所で行先を連呼しながら乗客を探す、という何とも心細いシステムなのだ。
来る時は「バクタバル! バクタバル!」と、車掌が叫ぶバスに飛び乗ることができたが、カトマンドゥ郊外に位置する友人のアパートに帰るには、何本もあるバス路線から選ばなければならない。
とりあえずは「ナヤ・バスパーク」行きのバスに乗ってはみたものの、目的の方角に向かうのか、向かったとしても、どこで降りていいのかわからない。
覚えているのは、行きのバスに乗った時「グリーンシティ・ホスピタル」という病院が見えた、ということぐらい。
こんな時に限って、数日前から通信不能になって、スマホが使えない (キャリア変更した際、クレジットカード登録前の請求30円が未納のためだったことが、帰国後に判明)
車内をキョロキョロすると、日本語の本を読んでいる若者が目に入ったので、「この病院を知らないか?」 と話しかけてみる。
「病院を通ります。私が、バスを止めてあげます」と彼。
私はホッとして、シートに腰を深々と沈めたのだった。
彼は、春から日本で働く予定だという。
やがて病院の近くでバスが止まり、私は彼に礼を言い、運賃を支払ってバスを降りた。
すると、私のあとから、彼もバスを降りてくるではないか。
「私のバス停は、過ぎました。
だいじょうぶです。戻るバスは、すぐ来ます」
鼻の奥がツンとする複雑な感情を、ネパール語で私は表現することはできないし、まだ彼の日本語では理解することができない。
私は「ダンニャバード (ありがとう)」と繰り返すだけだった。
友人との約束があった私は、足早にその場を去った。
路地の角で振り返る私の視界に、ディーゼル排気と砂ぼこり、けたたましいクラクションの喧噪の中で手を振っている彼の姿が、行き交うトラックやバスの車間の向こうから、途切れ途切れに飛び込んできた。
2月中旬、「東京に来ました」と、希望に満ちたメールが彼から送られてきたが、しかしそれは、三か月後には重苦しい内容に変わっていた。
「しごとは、やめました。クニヒロさんのちかくで、何かしごとはないですか?」
就職したワイズという会社で、コインパーキング施工に携わったのだが、早朝から深夜までの勤務で、残業代も支払われなかったという。
私は危惧した。
彼が「失踪技能実習生」の烙印を押されるのではないか、と。
しかし幸いなことに、彼の在留資格は「技能実習」ではなく、「技術・人文知識・国際業務」だという。
ネパールの PRITHIVI NARAYAN CAMPUS という大学 で経営学を履修しており、英語も話せるため、白馬村のホテルあたりでレセプション業務に就けるかもしれない。
高速バスの初乗車に備え、前夜「バスタ新宿」まで下見に行ったという。
不安と緊張の連続に違いない彼の、何か力になりたいと思う。
カトマンドゥで受けた恩は、倍にして返してやるから覚悟しやがれ。
…と思っていたのだが、逆に「民宿 世界食堂」のDIYを手伝ってもらいました。
参考資料 : 日本在留資格の種類
| 居住資格 | 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 |
| 活動資格 | 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、特定活動 |
文化活動・留学・家族滞在の場合でも「資格外活動の許可」を受ければ一定の範囲内で就労が可能
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で就労する場合、資格を活かした業務に就いているかがポイントになる。
出入国在留管理庁から「ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について」平成27年12月に発布されており (令和6年2月改訂)、「在留資格の該当性に係る考え方及び許可・不許可に係る具体的な事例」が公表された。
1 在留資格の該当性
- 申請人が 「自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務」に従事しようとする場合は、従事する業務に関連する科目を専攻して大学を卒業、あるいは10年以上の実務経験を有すること。
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
2 具体的な事例
《許可事例≫
本国において大学の観光学科を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する本 邦のホテルとの契約に基づき、月額約22万円の報酬を受けて、外国語を用いた フロント業務、外国人観光客担当としてのホテル内の施設案内業務等に従事するもの
《不許可事例≫
本国で経済学を専攻して大学を卒業した者が、 本邦のホテルに採用されるとして申請があったが、 従事する予定の業務に係る詳細な資料の提出を求めたところ、 主たる業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務であり、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの
なお、外国人の就労支援を「東京外国人雇用サービスセンター」が行っている

