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一日一食が若さのカギだった。「空腹が生き方を教えてくれる」

乳腺専門のナグモクリニック院長・南雲 吉則(なぐも よしのり・1955年生まれ )さんは、便秘や不整脈に悩まされたメタボリック体質を、一日一食などの健康法実践により、50代にして30代に見られるほどのアンチエイジングに成功したとされます。

50万部のベストセラーを記録した著者「空腹が人を健康にする」』(2012年)の続編が、2013年に発刊された本書です。

最新の科学的根拠に基づく健康法で、心身の状態を「絶好調」の状態におく。  何のために?   乳癌手術に情熱を注ぐ南雲さんの人生論が、前書きで語られます。

「余命あと三日だと宣告されたら、あなたは何をしますか?」と、南雲さんは問いかけます。
「美味しいものを食べて、お酒を飲んで、でしょうか?    では、余命三ヶ月と宣告されたら?

行ったことのない所へ行って、見たことのないものを見る?   それでは、余命三年と宣告されたら?
家族と過ごす時間を大切に、今の仕事を続けるのではないでしょうか。人生の目標は、目の前の家族と仕事にこそあるのです。

短期目標は『快楽』 中期目標は『非日常』。これらはリセットの手段にしか過ぎません。人生の長期目標が『日常』にあると気付けば、今日をおろそかにできません」
そんな信念が、南雲さんを日常の仕事へと突き動かします。

「麻薬的な快楽に身を委ねて遊んでばかりでは、さらに強い刺激を求めて生活は破綻します。
ヒマだとロクなことを考えません。攻撃の矛先が自分自身か他人に向けられ、行き着くところは恨みか自己嫌悪。

嫌なことは仕事で発散するのが一番。仕事に没頭する『一意専心』と、自分を責めることはすっぱり止めて、自分だけは自分の味方でいる『自己愛』こそが、『大脳の新皮質からの攻撃』から自分自身を救う手立てなのです」

本章では、私たちを取り巻く麻薬的な食品群や、大脳の新皮質が作り出す幻想、それらに対抗する健康法、というより「生き方」が、具体的に語られていきます。

身の回りは麻薬だらけ

ヘロイン・コカインに代表される麻薬は、植物が草食動物から身を守るために持つ神経毒・アルカロイドがその成分で、副交感神経の興奮を招く。

脳組織には、有害な物質が脳内に侵入するのを防ぐ機構、血液脳関門  (blood-brain barrier = BBB)が備っているが、エンドルフィンやドーパミンを分泌させることで、麻薬毒はこのバリアを突破する。

麻薬系の食材が多幸感をもたらすのはこのためで、グルタミン酸ナトリウムもその一つ。

脂肪やアミノ酸は分子量が大きいので血液脳関門を通過できないが、糖は通過できる。
脳の古皮質が優位だった時代は、「それ以上食べると肥満になって、敵から逃げられなくなるぞ」と信号が出て、糖の摂取にブレーキをかけることができた。

ヒトの脳が新皮質に支配されるようになった現代、体重の1/50しかない脳が、摂取した糖の1/5を消費すると言われる。

どうでもいいことをクヨクヨ考えて糖を消費し、そのストレスでまた糖を食べる。血中に糖があると脂肪は燃焼しないので、結果ますます太る。「寂しい女は太る」というのは、大脳の新皮質に支配されているということ。

暴飲暴食で身体は悲鳴をあげているのに、新皮質はもっとよこせと要求してくる。タンパク質を食べて腹一杯にしても、まだ甘いものが欲しいようなら糖質依存である。

ある意味、糖尿病は進化の証かもしれない。獲物を追いかけずにエサを摂取できる現代では、口と肛門があればよいので、捕食器官である目や足が退化していくのかも。

糖も麻薬系の食材であり、過剰摂取は身体に害である。

フライパンにこびりついたタンパク質や脂のコゲは洗い落とせるが、ジャガイモや白米は炭のようになって落ちない、という経験があるだろうか。

このコゲは最終糖化産物 (AGE = Advanced Glycation End Products ) で、身体の中でも糖が燃える際に生成されるが、コラーゲンと結合しやすいため、血管壁に付着して動脈硬化を招いたり、細胞の弾力性を奪って肌のシワやたるみ、膝や股関節の痛み、白内障を引き起こす。

塩も血管を傷つける。

塩分を摂取すると血液の浸透圧が高くなり、体内の水分を奪って血圧が上昇する。血管の内側は常に圧力がかかって傷つき、血液の流れが悪くなるので、さらに圧力を上げるという悪循環に陥る。

岩塩なら良い、という説もあるが、結晶が大きいため塩辛さを感知できないだけの話で、身体に良い塩などあろうはずがない。

アルコールは蓄積毒であり、生涯摂取量の上限は男性で500kg。休肝日はあまり意味がない。

コレステロールの過剰摂取は性ホルモンの過剰分泌を促し、前立腺がんや閉経後の乳がんを招く。性ホルモンの一つ、アンドロゲンはストレスで分泌が促進され、皮膚の脂を増やしてワキガや脱毛の原因となる。

身体の燃焼回路を知れば、食生活が変わる

マグロなど赤身の魚は、オメガ3脂肪酸を燃やして回遊する。いわば、心拍数を上げないウォーキングのような、有酸素運動を続けている。

酸素を効率よく使えるように、血液色素タンパク質のヘモグロビン、筋肉色素タンパク質のミオグロビンが多いため、身が赤くなる。

対して、ヒラメなど白身の魚は普段、海底でじっとしているが、獲物が近付くと糖質 (グリコーゲン) を燃やして瞬発的に動く。いわば、瞬間的に負荷をかける筋トレのような、無酸素運動を行う。

動物の体内では、糖質 ⇒ 脂肪 ⇒ 筋肉のタンパク質 (アミノ酸) の順に、エネルギーとして燃焼される。

糖質は瞬時にエネルギーとして使える一方、燃焼効率が悪く重いので、わずかしか体内に蓄えられないようになっている。これは人間も同じである。

それなのに、大脳新皮質の指示で糖質回路がオンになったままだと、食べることに追われてしまう。

1日1食にすることで糖質回路がオフになり、脂肪の燃焼が始まる。空腹時にこそ、脂肪を燃やすことができるのだ。

きれい好きは万病のもと。常在菌との共生が美と健康をもたらす

物が燃えるときは必ずススが生じるものだが、内臓脂肪が燃えるときに出るのが「サイトカイン(cytokine)」で、代表的なものがインターロイキン、インターフェロンなどで、数十種類が見つかっている。

サイトカインは、満腹時には血中を漂って外敵を破壊するので、栄養状態がよい動物の方が免疫機能が高いといえる。常に菌や寄生虫の侵入に晒される野生動物には非常に有益なのだが、免疫に使われなかったサイトカインは、血管の内壁を傷つける働きも持っている。

子どもを無菌状態で育てると、ちょっとしたことで免疫が過剰反応して大量のサイトカインを出し、これが血管ばかりか臓器まで壊して、多臓器不全に追い込んでしまうこともある。アレルギーや膠原病などの自己免疫性疾患は、免疫が高まることによって起きるのだ。

現代のきれい好きは度が過ぎている。

イソジンのうがいは、ムチンなどの粘膜バリアを洗い流してしまう。

肌もゴシゴシ洗うと、角質・皮質・善玉菌を根こそぎ剥がしてしまう。白い垢は、その残骸。こうして乾燥性皮膚炎が引き起こされ、掻いた箇所から悪玉菌が侵入して細菌性皮膚炎へと悪化する。さらに、皮膚の表面の細胞が血管に入ると、自身の免疫が皮膚を攻撃して、自己免疫疾患に陥る可能性もある。身体は手で撫で洗いするだけで十分。

ナイロンたわしで背中をこすり続けていると皮膚が黒ずむのも、皮膚を守るためにかえって角質が増殖して、色素沈着を起こすため。

髪についても、シリカ、シロキ、メチコンなどのシリコン由来のリンスでコーティングするとサラサラになるが、頭皮にとっては異物である。髪は角質であって細胞ではないから、栄養を吸収することは有り得ないわけで、「髪に栄養」は大嘘。

毛穴に汚れが詰まった頭皮の写真を見せる業者もいるが、あれは皮脂が毛穴を塞いで悪玉菌の侵入を防いでいるのだ。

空腹生活が身体にいい本当の理由

「食糧を4割減らすと1.5倍長生きする」と、あらゆる動物実験で証明されている。

空腹時には、糖質回路がオフになって脂肪の燃焼が始まるほか、「アディポネクチン」や「成長ホルモン」が分泌され、若返り遺伝子の「サーチュイン遺伝子」も形成される。

アディポネクチンは「長寿ホルモン」ともいわれ、上記のサイトカインで傷ついた血管内壁を修復して、動脈硬化・心筋肥大を抑制するほか、脂肪酸の燃焼促進、AGEの除去など多彩な作用を持つ。

若返りホルモンともいわれる「成長ホルモン」には、AGEの除去作用もあり、空腹時や睡眠時に活発に分泌される。睡眠の場合、22時~2時のレム睡眠時が最も分泌が盛んで、まさに「寝る子は育つ」なのだ。

お腹がグーッと鳴るのは、胃にあるかもしれない食物を、小腸に送ろうとする音だが、この音を楽しむことが、若返りの秘訣となる。

動物にとって若さや美しさは、内面の健康の表れ。生殖能力に優れていることを、分かりやすくアピールしている。

男は生殖能力が無くなると死んでしまう。女は孫であれペットであれ、愛情を注ぐ対象の面倒をみることで寿命を延ばす。

「好き嫌い」は大切な防衛本能

果物と野菜の違い、それは「食べられたい」か「食べられたくないか」の違い。

果物は、親木から離れたところに発芽して繁殖範囲を広げようとする。目立つ色と香りで「私を食べて」とサインを出して、動物に食べられる。種にはアミグダリンというシアン毒素があり、噛み潰すと苦い味がするようになっている。動物の体内に収まったまま種は移動して、糞とともに排出された場所に発芽する。

果実を食べる時は、皮も一緒に丸ごと食べること。外界とのバリアである皮には抗酸化・抗菌作用があり、体内のAGEを取り除いてくれる。

一方の野菜は、動物に食べられないよう、アクを持っている。

白いんげん豆粉のダイエット (そもそもダイエットとは「正しい食事療法」を意味するのだが) で、中毒事件が起きたことがあったが、白いんげん豆に含まれるレクチンによるもの。

茶がタンニンを持つのも、ハマキガの幼虫に消化吸収障害を起こさせ、食べられないようにするため。食後にお茶を飲むと満腹感が和らぐのは、この作用によるもの。であるから、お茶を飲むなら緑茶より、サポニンが豊富な牛蒡茶を勧めたい。

さらに野菜は、容易に食べられないよう、果糖をデンプンで蓄えている。デンプンを糖に変えるには分解酵素のアミラーゼが必要だが、加熱することで植物中のアミラーゼを活性化することができる。

調理の目的というのは、美味しくすることではなくて、植物の成分を分解するためだった。そうすることで、植物が持つ毒を消したのだ。

植物には毒があるので、「口にしたものは飲み込まなければいけない」ではなく、「不味いものは出していい」という教育をするべき。タマネギ入りのハンバーグを無理やり犬に食べさせると、血液が溶けて一大事になる。

自分の舌で身体によいものとそうでないものを、選り分ける能力を育むことが大切なのだ。

「レム睡眠」で頭と心のバランスを取り戻す

ヒトは「レム睡眠」の間に、活動中に得た情報を反芻して並べ替えながら、古皮質の海馬で仕分けをしている。明け方は浅い夢を見ながら、すぐには起きずそのまま寝ていましょう。その間にいらない記憶は遠くに押しやられてスッキリする。

記憶の整理が済んだら起き上がり、朝日を浴びる。睡眠物質の「メラトニン」が、日の出の光を浴びることで、「幸せホルモン」の「セロトニン」に変化する。

現代人は脳の「新皮質」に支配されている。

若者が年配者の命令に服従するのは「畏敬の念」によるもので、本来ならば恐れる必要のないものに恐怖心を感じる感情だ。大人への恐怖心を植え付けられた「いい子」、すなわち新皮質に支配された人間の中で、心と頭という二つの命令系統が引っ張り合いをした結果、心が折れてしまった状態が「うつ」

遺伝子に「自殺」という文字は無いはずなのに、大脳の新皮質が作り出した「幻想」に負けてしまう。

抗うつ薬のSSRIなどには、セロトニンの再取り込みを阻害することによって、シナプス間のセロトニン量を増やす作用があるが、そんなものを服用しなくたって、朝日を浴びればセロトニンがどっと出て、うつ状態から脱出できる。

日常生活を通じて健康になる

フォークソング「神田川」に登場する女の子は、湯上りに水をかけていれば、寒さに震えることはなかったはず。

ヒトは体温調節の働きで、温めれば温めるほど、深部体温は下がる。サウナに入ると体表は熱くなるが、内臓脂肪は燃焼しない。

入浴後に「湯上りの水」をかぶって寒さを感じさせることで、体温調節機能が働き脂肪の燃焼が始まる。身体は冷やした方が温まる。後頭部にある体温調節中枢が寒さを感じると、脂肪を燃やして体温を上げようとする。ただし、臓器の血流を良くするために、足は温めておく。「頭寒足熱」は理にかなっている。

呼吸に関していえば、通常の「鼻・鼻呼吸」 (鼻から吸って鼻から吐く) を、「鼻・口呼吸」に変えると、インナーマッスルを使った有酸素運動ができる。

「口・鼻呼吸」は、外界とのバリアである鼻をあえて使わない呼吸法。アレルギー抗原となる花粉を口から摂り入れて身体に慣らすことで、私は花粉症を克服している。

「口・口呼吸」は交感神経を刺激して、緊張状態を保つ呼吸法。会話している時がこの状態。

わざわざお金と時間を割いてジムに通わなくても、日常生活の中でラクに身体は鍛えられる。例えば雑巾がけは、肩甲骨が体幹から離れるように動かして行えば、家の中はピカピカ、気分はスッキリ。

「飢え」が生きる力をかき立てる

心に飢えがあれば愛を感じ、感謝の気持ちが生じる。頭に飢えがあれば、学んだことが知識となり行動につながる。身体に飢えがあれば、食べたものが栄養になる。人生において大切なことは、すべて飢えが教えてくれる。

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