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泣きたい夜は、これを読む ジョジョ 「今にも落ちてきそうな空の下で」

泣きたいとき、私が読む漫画ベスト3、第一位はこれ

「ジョジョの奇妙な冒険」第五部から「今にも落ちてきそうな空の下で」

「ジョジョの奇妙な冒険」(JOJO’S BIZARRE ADVENTURE)は、荒木飛呂彦が「週刊少年ジャンプ」に1986年、連載を開始した漫画

作品のテーマの一つが「継承」

人は死んで終わりではない。敗北したとしても、誰かが意志を継いでいく。

そんな継承の精神が、ギュッと濃縮された一話が、このエピソード。

読むたびに涙が出ちゃう私です、グッスン

 

ジョジョの基本的なストーリー展開は、正義と悪とのバトル。

登場人物はそれぞれ、ある一つのパワーに特化した「スタンド」という能力を持ち、このスタンドを駆使して、敵と戦うことになる。

 

JOJO第5部は、イタリアを舞台に物語が展開、主人公は、ギャング組織「パッショーネ」に属する青年、ジョルノ・ジョバァーナ (JOJO)

彼のスタンド能力は「触れた物体に生命を与える」というもの。

彼には、麻薬を流す組織の「ボス」を倒し、街から麻薬を排除するという夢があった。

謎に秘められたボスに近づくため、同じ夢を抱くブローノ・ブチャラティ率いるチームと合流したジョルノ、彼の活躍を軸に、物語は進行する。

 

今回のエピソードの主役となるのは、チームのメンバーの一人、レオーネ・アバッキオ。

彼のスタンド「ムーディ・ブルース」は、「今いる場所で過去に起きた出来事を、ビデオ映像のように再生し、そこにいた人物に姿を変えることができる」という能力を持っている。

 

アバッキオは、少年時代から正義感にあふれていた

 

しかし、理想に燃えた彼が目の当たりにしたのは、賄賂と汚職が横行する警察の内部組織と、命懸けで守っている市民が犯罪に手を染めているという矛盾

腐敗した社会に失望し、自らも収賄などの悪事に手を染めるようになるアバッキオ、ある日、自身の悪事の発覚を恐れ、犯人の逮捕を躊躇してしまう…

結果的に、自分をかばってくれた同僚の若い巡査を、殉職に追いやってしまう。

職務を追われた彼は、一生外れることのない十字架を背負ったままギャングの世界へと堕ち、ブチャラティ・チームの一員となった。

 

ボスの生まれ故郷と思われる、サルディーニャ島北東部のエメラルド海岸(コスタ・ズメラルダ)に辿りついたアバッキオ、ボスの正体を探るべく、スタンド能力を駆使して、過去のリプレイに取りかかるのだが…。

もう少しでボスに変身できるという瞬間、サッカーに興じる少年たちに混じったボスの奇襲を受け、瀕死の重傷を負ってしまう。


ここで物語は「次週に続く」

 

アバッキオの遺体を前に仲間たちが、弔い合戦の決意を新たにする、そんな当然の展開を予想して翌週の誌面を開くと、あれれ?…

死んだはずのアパッキオが、オープンテラスで一人、食事をしているではないか…?

 

不審な物音に気づき、テーブル下を覗いたアバッキオが見たものは、道路に這いつくばっている一人の警官だった

 

アバッキオ 「そんな中から、探す気かい?」

警官「仕事だからな」

 

 

 

珠玉の名言で彩られている点も、このエピソードの素晴らしいところ

虚を突かれたアバッキオ、ポツリと「うらやましいな…」と漏らして、言葉を続ける

過去を引きずり、自責の念にとらわれながら生きてきたアバッキオ、彼に対して警官は…

アバッキオを肯定する、優しさに満ちたひと言 (否定の否定は肯定)

「そんな事はないよ、アバッキオ」

数ある「ジョジョ名言」の中でも、私が一番好きなセリフです。

 

TVアニメでの、このシーン。 ( 第28話  真実に向かおうとする意志)

それまでモノクロで進行していた画面が、警官が光の中に立ち上がると同時に色彩を帯び、カラー画面へと変化していきます。

アニメーションならではの、秀逸な演出 !

アニメスタッフたちも、このエピソードには相当に入れ込んでいた、そんな情熱が伝わってくる出来栄え。

 

「何で…、俺の名前を…知っているんだ」

動揺を隠せないアバッキオ、そして気付きます、警官が誰なのか…

 

ここは、死後の世界なのか?…

だとしても、アバッキオを恨んで当然な警官の、慈愛に満ちた言葉の真意はいったい…?

 

ここで場面は転換、エメラルド海岸へ

 

海岸に駆け付けたブチャラティたちが見たもの……それは、胸に風穴を開けられたアバッキオの亡骸だった

 

敵の奇襲を避けるべく、速やかに現場を立ち去るという、リーダーとして苦渋の決断を下すブチャラティ

一行が立ち去ろうとした、まさにその時、ジョルノは奇妙なものを発見する

アバッキオの手に握られた、岩の破片。

ジョルノのスタンド能力で、その破片の出どころを見つけ出すと…

 


アバッキオは、やり抜いていた。

いつも途中で挫折していた彼が、死の間際、諦めることなく、仲間たちにボスの正体を伝えることで、社会に正義を取り戻すという、意志を貫いた。

 

過去の清算を果たした満足感なのか、彼の死に顔は、穏やかだった

 

 

アバッキオが最後に苦闘したであろうシーンは直接的には描かれておらず、読み手がそれぞれに想像することになります。

スタンドエネルギーを振り絞り、ボスの正体を岩に念写して息絶える、アバッキオのそんな姿を想像すると悲痛さが募る一方で、魂が解放されて安らかに天へ上る姿を見ると、悲しいけれど、どこかホッとさせられる。

感情を揺さぶられる本編、やはり「JOJOの中のJOJO」ともいえる一話です。

 

アバッキオはいわゆる「ネガティブ人間」でした。

過去を再生するというスタンド能力は、過ぎ去った日のトラウマをひきずって生きるアバッキオそのもの。

一方、ジョルノのスタンドは、あらゆるものに生命力を与え、その成長エネルギーを加速させるという能力。

前向きで希望に生きるジョルノとは、正反対のキャラクターとして、アバッキオは描かれていました。

チームの新人であるジョルノに対し、先輩風を吹かし、何かにつけて絡んできたのもアバッキオ。

しかしアバッキオは、最後の最期に、ジョルノが気づいてくれることを信じ、ダイイングメッセージを残したのです。

 

この一話を描くために、荒木センセイは登場人物のキャラクターを設定したのではないか、と思えるくらいの濃密なエピソードでした。

 

なお、TVアニメのエンディングには、無数の「イエローサルタン」が、ジョルノのスタンド能力によるものでしょう、アバッキオを弔うかのように咲き誇るシーンが挿入されています。

イエローサルタンの花言葉、それは「強い意志」

アニメスタッフたちの力の入れよう、やはり並々ならぬものが伺えます。

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