一日の終わり、気持ちに残尿感を抱くような、夜もある。
そんなときは、いっそ大泣きしたほうが、スッキリするじゃないか。
ストレスを感じる時は交感神経優位の状態で、自律神経のバランスが崩れているらしい。
涙を流すことで副交感神経のスイッチが入り、ストレス解消につながるそうです。
そこで、泣きたいとき、私が観る映画がこれ。
「香港国際警察 New Police Story」(2004年)
「ラッシュアワー」など、ハリウッド出演が多かったジャッキー・チェンが、久々にオール香港ロケで製作した作品。
1985年の「ポリス・ストーリー/香港国際警察」とは全く関連がありません。
このラストを見るたびいつも、涙ぐんでしまうのです。
劇中、印象的なセリフがあります。
劇場公開で観たとき、日本語字幕は「過ぎたことは忘れて、希望を持って生きるんだ」と訳されていました。
数年後、海外への飛行機の中で英語字幕版を見たとき、「過ぎたことは忘れて、悲しみを、強さに変えるんだ。(Turn pains into a strength)」との訳になっていました。
いったい、原語の広東語では何と言っているのか、ずっと気になっていました。
公開から20年近く経った今夜、「世界食堂」恒例のワイン会を開いて頂いたのですが、参加者の一人に、香港人の留学生がおりました。
これはチャンス。「いつか時間のあるとき、この映画のセリフを調べてもらえないかな」と頼んだところ、「ちょっと待ってくださいね」と彼。
ワイン会参加のかたわら、スマホ片手に動画を検索すると、一撃で広東語のセリフをメモしたばかりか、北京語と日本語の対訳まで書いてくれたのです。
英語もペラペラの彼。
いったい頭の中は、どんな構造になっているのでしょう。
彼が調べてくれたところによると、広東語では「立派な大人になれよ」と言っているようです。
日本語字幕とも英語字幕とも、まったく違う内容にビックリしました。
映画の字幕は、訳者の意訳によるところが大きいのですね。
私は、ストーリー展開からしても、英語字幕のセリフが、一番しっくりきます。
以下は、物語のあらすじ。ネタバレです。
ジャッキー演じる香港警察の警部は、部下を率いて武装グループのアジトへと向かった。
しかし、アジト内で部下が次々と返り討ちに遭い、ジャッキーだけが命拾いする。
しかも殺された部下の一人は、結婚を約束した恋人の弟であった。
事件後、ジャッキーは停職処分となり、部下たちを救えなかったショックから酒に溺れ、恋人との仲もギクシャクしていた。
1年後、落ちぶれて酒浸りの日々を過ごすジャッキー。
チンピラから財布を奪い返すと、道路に突っ伏したままのジャッキーに寄り添い、独り言のように呟いた。
「過ぎたことは忘れて、悲しみを、強さに変えるんだ」
翌朝、ジャッキーは掃除機の音で目を覚ました。
リビングでは、昨夜の青年が部屋の掃除をしている。
「シウホン」と名乗るこの青年は、ジャッキーの相棒として派遣された巡査とのことだった。
ジャッキーのことを「僕のヒーロー」と慕うシウホンによって、ジャッキーは少しずつ立ち直り、再び犯人逮捕に挑むことになる。
ここからは、毎度おなじみのジャッキー劇場。
ダブルデッガーが疾走するカーチェイスあり…
クライマックスは「香港コンベンションセンター」の、ドーム屋根からの落下アクション。
シウホンが実はニセ警官だったり、一年前の捜査の失敗は警察内部に内通者がいたためだったり、犯人グループが過保護や虐待で心の闇を背負っていたりと、エピソードを絡めながら物語は展開。
ニセ警官が簡単に組織に紛れ込んだり、冒頭の銀行襲撃では若造5人に警官隊が全滅させられたりと、「香港警察、大丈夫か」とツッコミどころ満載。
前半はエグいシーンや、「ジャッキー、泣きすぎ」の場面もありますが、なんやかんやで、事件は解決。
同僚たちの後押しを受け、恋人にプロポーズするジャッキー。
幸せいっぱいのジャッキーを見届け、一人そっと立ち去るシウホン。
彼の去った後には、いつも身に着けていた古ぼけたコートが、ポツンと残されていた。
場面は一転。
公衆電話ボックスで、受話器を握りしめている中年の男。傍らには、息子とおぼしき少年。
「あのときは面倒見たじゃないか。なあ、少しの金でいいんだ。おい、切らないでくれ」
がっくり肩を落とし、受話器を置く男。
「父ちゃん、お腹空いた…」
息子の訴えに、父親は道路向かいのコンビニエンスストアへ押し入り、パンを強奪…。
店員に追われ、店を飛び出した父親は、走ってきたトラックに跳ねられてしまう。
少年の目の前での出来事だった。
「自業自得だ」
駆け付けた若い巡査は、道路に倒れている父親を足蹴にした。
「やめろ。早く救急車を呼ぶんだ」
巡査を制し、自分の着ているコートを脱いで、父親にかける私服警官。
「なあ、坊や。世の中は不公平なことばかりだ。
でも、いいかい。過ぎたことは忘れて、悲しみを、強さに変えるんだ」
無言のままの少年。
警官の言葉が届いたのかどうかは、わからなかった。
「坊や、名前は?」
警官の問いかけに少年は、かろうじて答えた。
「…シウホン…」
本日、ワイン会のリスト (ギリシャ特集)
1. キリヤーニ バランガ スパークリング
ギリシャの高級土着品種 クシノマヴロ を使用。
2.ドメーヌ・シガラス サントリーニ アシリティコ
アシリティコは、ギリシャのサントリーニ島を原産とする白ワイン品種。レモンやグレープフルーツを連想させる酸味と苦みが特徴
3.アオトン ロラ ロゼ
ブドウが冷えた夜間に収穫する「ナイト・ハーベスト」を丁寧に行い、年間4,000本しか作らない、希少なロゼ。
4.アヴァンティス ロゼ
エチケットにデザインされているのは、ギリシャに春を告げる「アーモンドの花」
5.サントール アギオルデティコ
ギリシャ南部の土着品種「アギオルデティコ」を100%使用。アギオルデティコ100%使用ワインは、「ヘラクレスの血」との異名をとる。
(写真には、ないけれど) カレラ マスカット オブ バトラス 白デザート375ml
収穫後に天日干しして糖分を高めて発酵させ、さらに醸造の過程でもアルコールを添加して糖度を高めた、甘口酒精強化ワイン。
通常のワインとは異次元の味わい、それが3番の「アオトン」でした。
これはギリシャの伝統法、松脂を添加して造る「レッツ―ナ製法」によるため。
8000年以上前にジョージアで作られたといわれるワイン。その後、現在のレバノン (フェニキア人) によって地中海沿岸に広めらたワイン醸造ですが、4000年前にはギリシャにも伝えられたそうです。
当時、ワインの保存・運搬にはアンフォラ (amphora=ギリシアの壺の一種。「双取手」の意で,2つの垂直の取手が付いている) が利用されましたが、壺口の密閉に松脂が使われました。
ガラス瓶とコルクが使われる現在でも、松脂の独特の香りを残すため、あえて松脂を添加して醸造発酵するのが、ギリシャ独特の「レッツィーナ製法」です。
ギリシャに行ったら、ここを訪れたい
本日2本目のワインの醸造所「ドメーヌ・シガラス」が位置するのが、エーゲ海に浮かぶサントリーニ島。
白い建物と青い屋根のコントラストが美しいこの島で、ひときわ人気を集めるのが北部の港町「イア」ここは、世界一美しい夕陽が見える場所とされています。