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高山病を推してマチュピチュへ。ペルーレイル列車の素晴らしい眺望 

明け方4時、目が覚める。後頭部がズキズキと痛い。

風邪だろうか。

枕元に置いたペットボトルの水を一口飲んで、あと一時間ほどで多少なりとも回復することを祈りながら寝ようとするが、このまま死んじゃうんじゃないかと思うくらい痛みは増してきて、あっという間に5時になってしまった。

 

マチュピチュ村行きの電車に乗るため、ポロイ駅までのタクシーを05:30に予約してあるのだが、ベッドから起き出すことが出来ない。

「マチュピチュは諦めようか」「いやいや、ここまで来たのだから行けるところまで行ってみよう」自問自答を繰り返しながらフラフラ立ち上がると、今度は猛烈な吐き気が襲ってくる。

トイレに駆け込んで酸っぱい胃液を吐き出すと、ちょっと楽になった。
「よし。昨日、バスターミナルからここまで乗ってきたタクシーを、今朝も予約しておいて良かった。
無口なドライバーだったので車中、ポロイ駅まで15分ほどだが休めるぞ」
宿を出て表通りで5分ほど待つと、約束の5:30ぴったりに昨日のタクシーが私の目の前に、勢いよく滑り込んできた。

だが、ドライバーは昨日とは別人の若者だ。
どうも息子らしい。
そして彼がとってもゴキゲンで、ハイエストな状態のまま片言の英語で喋り続けているのだ。
聞けば昨夜、「ワールドカップ・ロシア2018」の南米予選で、ペルーがエクアドルに2-1で勝ったらしいのだ。

南米予選はサッカー連盟加盟10チームで争われ、ホーム・アンド・アウェーでの2回総当たり戦で実施される。上位4チームが本大会出場権を得て、5位のチームは大陸間プレーオフに進出する。

ぺルーはこの後、10月の試合でアルゼンチン・コロンビアと引き分け、予選結果を5位としてプレーオフに進出、11月にニュージーランドを下して、9大会ぶりにワールドカップ出場権を獲得することになる。

であるからこの時期は、ワールドカップに出場できるかどうかの命運をかけた試合が展開され、国中が熱狂しているらしく、若いドライバーが勢いづくのも無理はない。

彼の話に耳をふさぐわけにもいかないので「昨夜は良い試合でしたか」と、うっかり水を向けてしまったら、ますます話に熱がこもってきた。

深山幽谷の寺のような静けさだった昨日のタクシー内とは打って変わって、パチンコ屋の店内にいるような賑やかさで、とても一眠りできる状況ではない。

「ワールドカップでペルーと日本が対戦することになったら、あなたの国を応援するからね」なんていう社交辞令をかろうじて絞り出し、タクシーを降りてヨロヨロと駅構内に入る。

そんな失神寸前の私を救ってくれたのが、駅の売店で買った一杯のカフェラテだった。
ストーブにあたりながら飲み干すと、寒気が遠のいて、あたりを見渡す余裕も出てきた。

周囲の人々は皆、アウトドア雑誌の表紙から抜け出してきたようなファッションでキめている。
そりゃそうだ。
「一度は行きたい観光地ベスト10」というランキングがあれば、必ずや上位に食い込むであろうマチュピチュに行くのだ。
気合いが入るのは当然だ。

それにひきかえ私は、襟が擦り切れたシャツを寒さしのぎのため2枚重ね着といういでたちで、Tシャツで結婚披露宴に来てしまったような違和感がある。

それでも、2人掛けシートが向かい合わせになっている列車内で、対面に座った母娘は嫌な顔ひとつせず会話に付き合ってくれた。たぶん。

マチュピチュ側に向かって進行方向左手が、ウルバンパ川の流れが見えて景色が良いというが…。

私の席は右側だったが、天井部分も透明ガラスになっている車内は、どこに座っても景色を楽しめる。

 

リーズナブルな「エクスペディション」クラスの列車を選んだのだが、たまたま「ビスタドーム」クラスのパノラマ車両を使った便に、運良く乗り合わせたのかもしれない。

ポロイ駅で切符を発券してもらった際、すでに座席番号が指定されていたので、座席の希望をリクエストできるかどうかは不明。

 

それにしても、サングラス必携の列車っていったい…。アンデスの陽光がダイレクトに降り注いでくる。

 

あれれ、いつの間にか体調快調だぞ。車内販売が来たからビールも飲んじゃえ。

どうも高山病だったようだ。

標高1500m以下の低地から2000m以上の高地に48時間以内の短時間で到達した場合や、1日に標高差500m以上上昇した際、低酸素・低気圧に順応出来ずに発症する高山病は、不眠化すると肺に水がたまる「高地肺水腫」や、脳がむくむ「脳浮腫」を引き起こし死に至らしめる場合もある。

3000m級の山々を何回も縦走した経験もあるが発症の記憶は無いし、飛行機ではなくバスの移動だからと油断していた。

しかしクスコの標高は3,400m。未体験ゾーンだった。

到着日に動き回った人ほど翌朝、発症しやすいらしい。
アルコール摂取も呼吸を抑制するのでNG。
水分摂取は必要。コカ茶を飲むと症状が緩和されるという。

日本では処方箋が必要だが、ペルーでは薬局で買える「Acetzolamide (商品名ダイアモックス DIAMOX)」という緑内障治療薬に予防効果がある。ただし眼圧に異常がある人、降圧剤服用者は内服に注意が必要。

今向かっているマチュピチュ村のアグアスカリエンテス駅の標高は2,000mで、クスコより1,400m低い。
列車が進むにつれてケロっと治ってしまい、絵に描いたような高山病の症状だった。

09:30 アグアスカリエンテス駅に到着
スペイン語で「熱い水」を意味する「アグアスカリエンテス」の名のとおり、「マチュピチュ行バス停」から上流へ、15分ほど歩くと温泉がある。

 

マチュピチュの遺跡入口では入場券を販売していないので、麓の観光案内所で購入する。
152PEN(5,200円) クレジットカード不可、現金のみ。

 

マチュピチュ行きのバス停。運賃は 往復(two way) 78PEN (2,700円)。ドルも使える(24USD)

 

10:45発のバスは標高差400mを登りつめて11:05 遺跡入口に到着。 途中、円錐状の山が車窓に見えてくる
クスコでは寒いくらいだったが、今では半袖で十分
後方遺跡の左側が広場、中心が居住区、右側が段々畑
天下の遺跡に足を向けてお昼寝
パンで昼食。遺跡には売店はおろかトイレすら無いので、食料はクスコで仕入れてくるのが良い。
放牧されているリャマも、どことなく哲学的な顔つき

 

歩道の石段一つひとつがけっこう高さがあり、歩いているだけで疲れてしまう。
2時間ほどで遺跡巡りを切り上げ、13:00に帰りのバスの列に並ぶ。

一時間ほど待ってバスに乗車。

木陰で待てたから良かったが、炎天下ではたいへんだ。

14:30マチュピチュ村に帰還

マチュピチュ村にはレストランや土産物店が並ぶ

ペルー名物、クイ(養殖ネズミ)の丸焼きにトライ
鋭い歯がついたままの顔がリアル。食べ残してはネズミの魂も浮かばないので完食。味は鶏肉みたい。
テラスで食事していると、ストリートで民族音楽の演奏が始まる。
16:43 帰路の列車に乗車
車内で突然、車掌さんたちによるファッションショーが始まる。アルパカ製品の即売会、という仕組み。少し照れたような表情が初々しい。
2010 ポロイ駅着。民族舞踊でお出迎え。乗客に楽しんでもらおうという姿勢が好感度大。

ポロイ駅にタクシーの迎えを頼んでおいたのたが、同じような送迎車で駅前はごった返している。

予約の際に、タクシーの特徴をよく確認しておくことが大切だ。
ポロイ駅からクスコ市内に向かう道路は夜景が美しいと聞いていて、確かにオレンジ色の街灯は綺麗なのだが、わが故郷、長野市・往生寺からの、善光寺平夜景の方が圧巻だ。

脇道のどこかに、絶景の夜景スポットがあったのかもしれないが。

クスコのスーパーで、明日のプーノへの移動車中用に、ミネラルウォーター3本とガムを購入。 13.9PEN(470円)現金支払
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