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ダイ・ハードへのオマージュに満ちた快作「スカイ・スクレイパー」

ダイ・ハードへのオマージュに満ちた快作「スカイ・スクレイパー」

米映画「スカイスクレイパー」を観ました。

時間が空いたので映画館に飛び込み、すぐ見ることができるという理由で選んだので予備知識ゼロ。「摩天楼」というタイトルから「ヒューマンドラマ?」と思っていました。

ところがさにあらず。「ワイルドスピード」でお馴染みの肉体派俳優、ドウェイン・ジョンソン主演、高層ビルを舞台にしたアクション映画でした。

と聞けば、思い出されるのは「ダイ・ハード」(88)。まんま本作はダイ・ハードのコピーなんですが、いたるところにダイ・ハードへのオマージュが散りばめられていて、とても楽しめました。

一番印象的だったのは、ダイ・ハードのラストでブルース・ウィルス演じるマクラーレン刑事を、起死回生に導いた「粘着テープ」。今回も大活躍します。

ダイ・ハードの原作となったロデリック・ソープの小説 「Nothing Lasts Forever 」(79)では、米国籍のオイルカンパニーのビルが舞台でしたが、映画では当時の日本企業のアメリカ進出ブームを踏まえ、「ナカトミ・コーポレーション・ビル」という設定に変更されています。
今回は一気に舞台を香港に移して、ビクトリア湾の一角に立つ高さ1,100メートル・250階建ての超高層ビルが舞台です。

現在のところ、香港のビルとして一番高いのは484メートルの世界貿易センタービルですが、現実にサウジアラビアでは高さ1,008mとなる「ジッダ・タワー」が2013年に着工され、2020年完成を目指して建設中とのことです。

香港という設定は中国マーケットを意識したためとも言われ、実際、本作の興行成績の三割以上は中国で稼ぎ出されたそうです。ならばいっそのこと上海を舞台にすれば良かったのに、とも思うのですが、映画の製作環境としては香港が整っているのでしょうか。

いずれにしても東洋人俳優にスポットが当たることになり、本作で印象的だったのは、Sっ気たっぷりに敵の悪役を演じた「ハンナ・クィンリヴァン」(Hanna Quinlivan)。美しい黒髪をなびかせながらの格闘シーン、俊敏な動きが魅力的でした。

台湾女優の彼女は、オーストラリア人の父と朝鮮系台湾人の母との間に、1993年誕生。

ダイ・ハードでは一方的に守られる立場だった「妻」が、本作では我が子のために大奮闘する役柄は時代の流れでしょう。

肉体のタフネスだけでなく、警察に保護された妻が犯人の特徴について、「身長○○cm、筋肉質、北欧訛りの英語」とサラリと言ってのける知的ぶりにも脱帽です。

この「英語の訛り」、ダイ・ハードでは意識的に使われているらしいです。
アラン・リックマン演じるテロリスト・ハンスが、マクラーレン刑事とバッタリ鉢合わせして、咄嗟に人質のふりをするシーンがあります。ハンスは普段イギリス英語を話しているのですが、このシーンのみアメリカ英語を使うことで、ハンスの機転ぶりを際立たせているそうです。

「ダイ・ハード3」では、アメリカ人になりすましたドイツ人テロリストが「The ladies’ clothing section in this department store is on the first floor(婦人服売り場は2階ですよ)」と喋ったことで、マクラーレン刑事は疑惑を抱きます。日米で言うところの「first floor(1階)」は、イギリスでは2階を指すのですね。(1階は『ground floor』)

本作のラストで主人公が言う「I’m lucky man」というセリフは、「 世界一ついてない男」と揶揄されるマクラーレン刑事へのアンチテーゼかと思ったのですが、このキャッチフレーズは日本の配給会社が勝手につけたもので、英語では「wrong guy in wrong place」(間違った奴が間違った場所に)、つまり「場違いな奴」と表現されているそうです。

色々とインスパイアされるところの多い「ダイ・ハード」ですが、「スリルを感じる映画ベスト100」の39位に選ばれています。
ちなみに1位「サイコ」(60)  2位「ジョーズ」  (75)  3位「エクソシスト」(73)

ところで、「ターミネーター」の決めセリフは「I’ll be back(戻ってくるぜ)」でしたが、本作では「I’m on  your behind(後ろにいるぜ)」です。

backとbehindの感覚的な使い分けは難しいですね。「I’m on your back」では「私はあなたの背中にいます」となってしまい、これでは子泣き爺です。

to run back(走り戻る) とto run behind(遅れて走る)のように、副詞用法では意味が全然違ってしまいます。
backは時間や場所に「戻る」イメージ。動きがあるので動詞を伴う。
behindは位置が「後ろ側」のイメージ。状態を表すのでbe動詞を伴う。

behindは「to be behind time (時代遅れ)」「to follow behind me (私の後に続く)」のように、名詞と組み合わせて「(名詞)~のうしろ」を示す前置詞としても使えます。

外国人ドライバーには「Keep coming, keep coming, stop!」(そのまま~、そのまま~、はいストップ!)みたいに誘導するのがいいみたい。日本で使われている「Back all right(バックオーライ)」をあえて英語風にすれば、You’re all right at the rearでしょうか。

同じように「前」を意味する「forward」は「 前方へ動作する事に繋がる」、「front」は「 物理的に前」と云う感覚ですね。

英語の勉強にも役立つ作品でした。

【本日の鑑賞席】グランドシネマズ 5番シアター H-10(非常に良い。G列も良さそう)、

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