ぼかし肥料の作り方

ぼかし肥料の作り方

「ボカシ肥料」講習会に参加しました。実習の前に、肥料に関する講習会です。

肥料の5大要素

1)窒素  [ni・tro・gen / nάɪtrədʒən]

葉を生長させる養分。多すぎると徒長して軟弱になり、病害虫に侵されやすくなり、足りないと発育が悪くなります。

マメ科植物(エンドウ、クローバー、レンゲなども仲間です)は、根粒菌と共生して窒素固定するので、施肥不要です。

窒素肥料は降雨になりそうな時に施肥します。また、葉物野菜には少な目で充分です。

 

無機肥料 (化学肥料) には「硝酸態窒素」という形の、水に溶けやすく植物が吸収しやすい分子構造をもった窒素化合物が大量に含まれています。必要以上に硝酸態窒素を吸収した野菜は緑色が濃くなり、苦くなります。

硝酸態窒素は動物の体内に取り込まれると「亜硫酸窒素」に変わり、貧血を引き起こすほか、タンパク質と反応してニトロソアミンという発がん作用を持つ成分に変わります。

何年か前の事件です。雨不足でぐったり萎れた牧草が、干天の慈雨で緑を取り戻し、牛たちは大喜びで青草を食べました。その直後、牛たちが、次々と死んでいったのです。

干ばつの水分蒸発で地表にたまった硝酸態窒素が、雨に溶けて一気に牧草へと蓄積したのが原因です。牧草を食べた牛の体内でメトヘモグロビン血症が起き、血液が酸素の運搬機能を失ったのです。

また、「プルーベビー」事件もありました。硝酸態窒素の多い草を食べた牛の乳を飲んだり、生野菜を食べていた母親の赤ちゃんが、青い顔をしてグッタリしてしまったのです。硝酸態窒素が母親の腸で亜硝酸になり、母乳をへて赤ちゃんの体に入ってメトヘモグロビン血症を引き起こした結果です。

 

発酵が未完全な堆肥には「アンモニア態窒素」が含まれており、土壌中で硝酸態窒素に変換されますが、変換の過程でアミノ酸が生成されるので、アブラムシなどの害虫たちに大好物を提供することになります。質の悪い堆肥の使用は、化学肥料を大量に使うことと同じです。

 

2)リン酸  [phos・phor・ic     ac・id / fɑsfˈɔːrɪk  ˈæs.ɪd]

開花や結実に不可欠の養分。多すぎると鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)を欠乏させ、足りないと結実の遅れ、収量の低下がみられます。
吸収効率が低く、根の近くでないと吸収されません。

「過リン酸石灰」など水溶性のものが肥効が高いですが、「骨粉」は不溶性でも肥効が高いため、元肥に適します。

 

3)カリウム  [独 Kalium / ˈkaːliʊm]

根の発育に関係して、サツマイモやジャガイモの太りをよくします。葉物野菜にも多めに施肥します。
水溶性で流亡しやすいため、少しずつ追肥すると効果があります。不足すると枯れ葉や落葉が早く見られ、病気にかかりやすくなります。

カリウムのみを含む肥料「硫酸カリウム」は、速効性はありますが持続性がないため、元肥と追肥に分けて施します。カリウムが作物に吸収された後は土に硫酸が残り、土壌を酸性にするため、pHバランスに気を付ける必要があります。

 

4)カルシウム(石灰) [cal・ci・um / kˈælsiəm]

畑の土は徐々に酸性に傾きやすく、特に日本はカルシウムが少ない酸性土壌なので、土の酸度(pH)に応じて作付け前に必ず混ぜます。土を中性に近い状態にしておくと根張りがよく、土壌微生物の有益な菌を増やすことができます。なお、鶏糞肥料の使用は、土壌をアルカリ性に傾かせます。
散布が一か所に偏ると土を固くしてしまうので、均一に撒きます。

石灰植物とも呼ばれるキャベツ、ホウレンソウ、セルリーなどは養分として多量に吸収します。ハクサイ、キャベツの心腐れの原因は、アンモニア態窒素の過剰施肥によって、カルシウムの吸収が抑制されるためといわれます。カルシウムの吸収が少ないと、蒸散量が多い外側にはカルシウムが行きわたっても、内包葉や生長点付近は不足して、細胞の壊死が生じてしまいます。

5)マグネシウム(苦土) [mag・ne・si・um / mægníːziəm]

葉緑素の主成分なので、不足すると光合成の働きが悪くなります。

食品を買うときと同じく、肥料を買う時も成分表を確認しましょう

 

鶏糞はトウモロコシ・キュウリ・ブロッコリーにたっぷりと、トマト・レタスには控えめに

 

ボカシ肥料とは

有機物を肥料としてそのまま用いると、窒素やリン酸の成分が強すぎて、植物の根を痛めてしまいます。また、油分が残っている場合も、植物は油を嫌うので、これも良くありません。(油粕が肥料になるのは、油分が完全に分解しているからです)
有機物に土や籾殻などを混ぜて (薄める=ぼかす) 、発酵させて作った肥料を「ボカシ肥料」といいます。ボカシ肥料には好気性発酵と嫌気性発酵があります。

いずれの場合も完全に発酵させることが大事。発酵がうまくいかないと、単なる「腐敗」になってしまいます

好気性発酵は、土・草・石灰を何層にも積み重ねて発酵させます。発酵が進んで発熱してきたら、ひっくり返して空気を入れます。

 

嫌気性発酵ボカシのレシピ

 

材料 値段例:円
魚粉 3kg 308
米糠 (EM菌。糖蜜を混和) 4kg 250
鶏糞 2kg 60
シリカ 40~80g
籾殻 2kg
牡蠣殻 3kg 210
硫酸マグネシウム (出来上がりの乾燥時に混和) 2kg 185

硫酸マグネシウム以外の材料をビニール袋に入れて、水を加えながら袋ごと上下ひっくり返したりしてよく混ぜます。破ける可能性もあるので、袋は二重にしておきます。
腐ったような臭い、アンモニアのような臭い(アンモニア発酵)がするボカシ肥料は失敗です。また、白いカビは問題ありませんが、青カビや黒カビも失敗です。失敗したぼかし肥料はそのまま使ってはいけません。病害・害虫の原因になります。

水分過多による失敗が多いので、水分調整がボカシ肥料の成否のカギとなります。水分が少な過ぎると完成が遅くなります。


手でギュッと握って固めたとき、指で押すとパラパラと砕ける程度になったら完成。

ナイロン袋に入れて密封した状態で、直射日光を避けた場所で保管します。発酵の途中で酸素が入ると、水と二酸化炭素に分解されて発酵が止まってしまうので、しっかりと空気を抜きましょう。好気発酵と違って発酵熱は出ないので、温度調整のために混ぜる必要はありません。
夏なら1カ月、冬なら2~3カ月程度で肥料として使えるようになります。

ボカシ肥料は窒素過剰となって葉が繁茂したり、病害虫にかかりやすくなるリスクも考えられます。元肥として使う場合は、必要とされる肥料の半分の量のボカシ肥料を、全体に混ぜ込まずに上層の3分の1程度に混ぜます。
追肥として使う場合は、少量のぼかし肥料を表面にまくだけで効果を発揮します。

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