長野県県民文化部国際課多文化共生係の主催による「日本語交流員養成初期研修会」が伊那市生涯学習センターで開かれました。
研修会の第二回目となる本日は、公益財団法人長野県国際化協会 副理事長 春原 直美さんによる「日本語学習に対する長野県、地域の独自性 ～どんな特徴があり、どんな日本語教室があり学習者がいるのかを知ろう～」と題した講演を聴きました。

長野県内に居住する外国人数

意外に思えたのは、ペルーから421人 (12位)、ボリビアから183人 (16位) の方々が長野県で暮らしていることでした。

県内77市町村すべてに外国人が暮らしており、総数は35,493人で、人口に占める割合は1.69%です。

三ヶ月以上の在留資格所持者を対象に､2018年12月末現在で集計していることもあって､スキー観光客が多い白馬村が10位・971人となっており、人口に占める割合が10.28％と突出しています。
川上村が39位で130人・3.29％ですが、調査時点が夏であればもっと高い比率になっているでしょう。
私の住んでいる大町市は20位・515人・1.86%。
お隣の小川村は71位・13人・0.5%。

 

長野県における、外国人居住者の歴史的背景

1931年（昭和6年）に起きた満州事変から1945年（昭和20年）の太平洋戦争終結までの14年間に、いわゆる旧「満州国」・内モンゴルに、国策として送り込まれた入植者を「満蒙開拓団」と呼びます。

昭和恐慌下での農村更生策と位置付けられ、入植者募集にあたっては、「王道楽土」「五族協和」をスローガンにした大々的なキャンペーンのもと、国はノルマを府県に割り当て、府県は郡・町村に割り当てを下ろし、町村は各組織を動員してノルマを達成しようとしました。

養蚕・製糸業の不況もあり、開拓に送り込まれた27万人のうち長野県出身者が約3万4千人で最も多く、全体の12.5%を占めています。第二位の山形県が1万3千人であり、長野県が突出している原因には、信濃教育会が率先して取り組んだことも一因といわれます。

開拓地とはいいながら、実際には地元中国人が耕作していた土地を強制的に買収したものであり、そのため開拓団は土地侵略の先兵とみなされ、反満抗日ゲリラの襲撃にあいました。

ソ連国境地帯という場所がら、関東軍の対ソ戦略という軍事・治安を任務とする、予備軍の役割も担わされました。

開拓民は、役場と農協を兼ねる団本部を中心に、学校、神社、医療施設、購買部を中心とする日本人コロニーを形成しており、コロニー内で生活が完結していたため、現地中国人との交流はほとんどありませんでした。

そしてソ連の大戦参戦により、国境地帯に取り残された入植者はシベリア抑留者となり、日本への引き揚げ者も途中で多くの死者を出すことになります。

やっと帰国した引揚者ですが居住のあてはなく、戦後も苦難の生活を余儀なくされました。政府は移住用の土地を日本各地に割り当てますが、開墾の必要な土地ばかりで、多くの人々は過酷な状況にさらされました。

 

長野県における、外国人居住者の地理的背景

日本がバブル経済期といわれた1986年頃から、製造業を中心に深刻な問題となった人手不足を補うため、外国人労働者が雇用されるようになりました。

1990年の入管法改正により、日系二世三世とその家族に対して在留資格が緩和され、就労活動に制限のない「定住者」「日本人配偶者」として入国できるようになりました。

上田市には、自動車やOA機器の部品メーカーが集積していたため、ブラジル人を中心とした外国人が集住するようになりました。

本年(2019年)12月26日、上田市において「外国人集住都市会議」が開催されます。この会議は、北川・浜松市長の呼びかけで2001年に結成されましたが、参加自治体は減少傾向で、現在は12市1町で構成、県内からは上田市・飯田市が参画しています。

 

長野県における、外国人居住者を取り巻く課題

日本の小中学校に通うべき年頃の子どもたちのうち、学校に通っていない外国籍の子どもたちが数多くいることがわかったため、2002年に「外国籍児童就学援助委員会」を立ち上げ、県民からの寄付による「サンタプロジェクト」がスタートしました。

一方、近年の課題として、技能実習生が在留資格を取得するには「監理団体」を通す必要がありますが、監理団体によって来日前の日本語学習レベルに大きな差があることが指摘されています。
また、地域の生活者のために開いている日本語学校に、企業から集団で技能実習生を送り込んでくる例もあります。
さらに、日本語学校では、戸籍から悪質メールの見分け方まで、語学だけでなく多岐にわたる相談を受けている実態が浮き彫りにされています。