「長野で家を建てるなら」 松下敏之

「長野で家を建てるなら」 松下敏之

著者の松下敏之さんは、「マイホームは持つことが目的ですか?家は箱です。その中で過ごす、家族の幸せな暮らしがなければ意味がない」と強調したうえで、「住宅ローン破綻は年間6万件に及ぶ」現実と指摘します。

なぜ、このような事態になるのか?

「予算から逆算せず、欲しい物件ありきでローンを組むから」と松下さんは分析、「銀行の審査をパスした融資額とは、銀行が貸し出せる額であって、施主さんが借りるべき額ではありません」

破綻に陥らずとも、「門柱やアプローチなど住まいの顔としての玄関が演出されていない、境界のフェンスや土留め・生垣が整備されていない、家電品が貧弱」など「バランスの悪い家を見かける」と、現場目線から例を挙げ、「家と庭があってこその『家庭』なのです」と訴えます。

 

また、メンテナンス費用への配慮も必須といいます。

「どうせ建てるなら、という枕詞を連発しながら、自動車でいえば『ベンツのような』家を購入したとしましょう。しかし、高級車だからといってオイル交換は不要になりませんし、車検も必要。できるだけ手入れの簡単な設計・仕上げ材料を選ぶこともコツです。」

 

タイトルから察するに、寒冷地である長野で住宅を建てる際の、工法に関する本かと思いましたが、大手住宅メーカーの営業マンとしての経験や、ファイナンシャルプランニング技能士の資格を基盤に、人生設計からみた家づくりの内容となっています。

 

「マイホームは『夢』住宅ローンは長く続く厳しい『現実』。どちらが欠けても人生は成立しません。バランスをしっかりとることが大切です。そのために家族会議をしっかり開いて、未来をシュミレーションしましょう。休日はどう過ごすのか、子どもたちはどんなふうに育てたいのか、親御さんが年老いたときにどう対応するのか。明確な答えを出す必要はありません。家族で話し合ったというプロセスが大切です」と訴え、「そのうえで、新築後の『未来家計簿』をつけましょう。その際、家のメンテナンス費用を『リフレッシュ貯金』として、毎月5000円~10,000円ほど計上しておきます。こうすることで、新築にかけることのできる費用が見えてきます」とアドバイス。

 

住宅ローンについては「2,000万円を金利 3%・25年 ローンで組むと、毎月の返済額は 94,842円、利息総額は 8,452,481円。35年なら月々 76,970円、総額は 12,327,082円にもなります。基本的に住宅ローンは定年前に終えるべきです」

この金利負担を軽減するために、「35年 3% ローンの金利が 2.99% で組めれば、総返済額は46万円減ります。金融機関との交渉が必要となるわけですが、『資金計画の安全性を銀行にアピールする』ために、さきほどの『未来家計簿』を活用できます。」

 

世間には、終盤に向かうにつれて箇条書き的な表現が多くなり、筆者の息切れを感じさせる著書もあるが、本書は「私が出会ったお客様たち」という最終章に、一番の躍動感を感じます。

施主と接する経験の中から、「意気揚々と工事着工の矢先、掘削した地中から産業廃棄物が出てきた。しかし、売主は責任を負わない、という特約条項を契約に付けていた」という例を挙げ、「知識も経験も浅いお客様が、いわゆる用心棒(住宅会社の介入)なしに、土地購入を進めるのは危険」だと指摘します。

 

あるときは、結婚式を控えたカップルの雰囲気に妙な違和感を覚え、その気持ちを伝えたところ、「結婚を親に反対されている」との返事。「親御さんに祝福されない家づくりは、結局のところうまくいきません。二人が不幸になるお手伝いはしたくありません」と、新居建築を保留した逸話など、「住宅会社は、家づくりにおける重要なパートナー」との、著者の信念が伝わってきました。

 

【以下は住宅ローンに関する私的なメモ】

2003年、政府出資100%の住宅金融支援機構(JHF)と民間金融機関により作られた「フラット35」は、その名のとおり、最長35年間、金利を固定できる住宅ローン。

利用するには適合証明書の取得が必要で、適合証明検査機関か適合証明技術者に検査依頼をする。検査費用は業者によって異なり、数万~10万円程度。

フラット35は金利が固定となっているため、「当初固定金利型」「変動金利型」などと比較すると金利は比較的高めです。

 

借入金額3,000万円・返済期間35年・借入9割以下・ボーナス払いなしの場合(2018年11月現在 フラット35は金利 1.45%、変動金利住宅ローン 0.625% )

支払い総額で見ると、500万円以上もの差が出てしまうことになります。

 

 

年齢によっても異なるが、3大疾病保障特約 50% で 0.25% 、100% で 0.4% 利率プラス

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