「笑いの免疫学」船瀬俊介

「2006年5月、早暁、名栗川渓谷の鳥のさえずりを聴きながら執筆」と、あとがきに記された本書は、笑いの医療効果を説いています。

 

「笑うことで脳血流が増え、記憶力アップ・アルツハイマー防止にもつながる」と主張する筆者は、「笑いの医学」のパイオニア、ノーマン・カインズの体験を引き合いに出します。

 

記者であったノーマンは、50歳で「強直性脊髄炎」を発症、その原因を「ロシア取材中に吸ったディーゼル排気ガスにより、副腎が疲弊したことで抵抗力が低下したため」と考えます。

好奇心と探求心のかたまりであった彼は、「ネガティブな情緒がネガティブな化学反応を引き起こすなら、積極的な情緒は積極的な化学反応を引き起こすのではないか」と仮説を立て、「笑いの鎮痛効果」の実証に取り組みます。

 

彼は病室に映写機を持ち込んで、喜劇映画を見ることに没頭、奇跡は徐々にその姿を現すことになりました。

10分間、腹を抱えて笑った後は、2時間は痛みを感じることなく眠ることができたのです。

 

この結果について筆者は、「笑うことで、エンドルフィンが分泌されたため」と推論します。

エンドルフィンはモルヒネに酷似した物質で、アドレナリン・ノンアドレナリンを中和する、「人体に備わった麻酔薬であり弛緩薬」です。

 

また、「笑いや腹式呼吸で腸や横隔膜が動かされることで、免疫細胞や血中に酸素が取り込まれ、コルチゾールが酸化分解・代謝されて尿中に排出される」効果も指摘します。

コルチゾールは、ストレスで脳下垂体が刺激されたとき、副腎皮質から放出されるホルモンで、タンパク質と脂肪を分解して血糖値を上昇させたり、NK細胞の活動を抑制してしまいます。

 

さらに笑うことは、「前葉体が興奮して間脳を刺激、善玉ペプチドが血液・リンパ液に放出され (ペプチドシャワー) NK細胞を活性化させる」と考察します。

 

ストレスを受けると唾液の酸性度が強くなってドロドロし、アミラーゼ分泌量も増加します。

一方、笑うことで唾液中の「免疫グロブリン」が増加することも確認されています。

免疫グロブリンとは、異物が体内に入った時に排除するように働く「抗体」の機能を持つタンパク質のことです。

 

 

アレルギー反応は、抗体 (IgE) が異常増殖して、抗原 (アレルゲン) を過剰攻撃することで起こります。

お母さんが授乳時に「笑う」ことは、乳児のアレルギー反応を減少させるとも言われます、

 

「自分のストレッサーに気付き、これまでのストレスの受け止め方や対処法を変えることも大事」と、筆者は主張します。

そのために「意識的に笑顔を作ることも効果的」とアドバイス。「笑うと表情筋が動き、それを『楽しい』と心が感知、無駄な力が抜けます。カール・ルイスは、70mを過ぎたところニコッと笑顔を作ることで、スピードアップしたといいます」

 

 

 

「いつも笑って朗らかで、前向きに生き生きと生きる人、幸福は他者から与えられるものではなく、自らの内側から湧き出ずるものと考えるタイプの人は、ガンになりにくい」と、筆者は言います。

 

さらに「人は思ったとおりのものになる。イメージは実現する。強く願うことは、その願いに関する遺伝子がオンになる」とし、「NK細胞がガンを食いつぶすイメージトレーニングも効果的」と主張します。

 

医療業界の現状を、「ガンになったら、放っておくと死ぬしかありませんよ、という迷信をガン患者に植え付けることで、『ガン・マフィア』が国内医療費の半分を簒奪 (さんだつ) している」と断じ、「こうした虐殺者たちが富と栄誉を手に入れ、代替医療や統合療法に取り組む医師たちが弾圧排撃されるような社会を許してはならない」と力説します。

 

「病院にカラオケルームが設置され、薬局ではお笑いビデオが支給され、一日一回、30分は見てよく笑うことが処方薬になるような医療界が理想」と、冗談交じりに語りながらも、「どの患者も内に自分自身の医者を持っている。その各人の中に住んでいる医者を首尾よく働かせることができたら、めでたしめでたし」と語ります。

 

「死を自然現象の一つだと理解し、今できる建設的準備はしておこう」と呼びかけ、締めくくりました。

 

船瀬俊介 著 「三日食べなきゃ七割治る」>>>

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