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全国二位の飲み屋街・伊那市で、「やさしい日本語」について考えた

長野県 県民文化部 国際課 多文化共生係の主催による「日本語交流員養成 初期研修会」が、伊那市生涯学習センターで開かれました。
研修会の第4回目となる本日は、信州大学グローバル化推進センター 日本語講師 岡宮 美樹 さんによる「やさしい日本語 ~日本語交流員として身につけておくべき日本語のスキル」と題した講演を聴きました。

私たちが日本語で外国人と話すとき、会話につまづきが生じて、うまく意思疎通ができないことがあります。
これは、使える日本語の少なさや発音の不十分さなどによる「外国人の発話の問題」と、外国人にとって難しい日本語を使うなど「日本人の発話の問題」の、双方の原因によるものです。

こうした場合に私たちは、言葉遣いや会話の内容を、日本人と話す時と変えて調整することがあります。
このような対話的調整を「フォリナー・トーク (foreigner talk)」と呼び、「会話的」なものと「言語的」なものがあります。

会話的調整としてのフォリナートーク

不自然な日本語を話す外国人に対しては、左図のような6つの返し方が考えられますが、本講座の対象者である日本語交流員としては、意味のやり取りをすることで、コミュニケーションを続けることを重視します。

わかったふりをせずにやり取りを続けることで、相手が本当に言いたいことが分かってくることもあります。

相手の意図を先取って話さない姿勢をとることで、外国人が話す機会が増え、結果的に外国人の日本語力が向上します。

 

言語的調整としてのフォリナートーク

「やさしい日本語」の使用を心がけます。

① 簡単な語を使う。
② 一文を短くして文の構造を簡単にする。
③ 「です。ます。」など、文末表現を統一する。
④ 二重否定の表現は避ける。
⑤ 曖昧な表現は使わない。
⑥ 動詞を名詞化したものは動詞文にする。(例 : 壁の割れ ⇒ 割れたところ)
⑦ 外来語を使うときは注意が必要。(「テーマソング」は独語と英語のミックス。英語では “スィーム”と発音する)
⑧ 擬音語・擬態語は避ける

 

日本語学習のための教科書

日本語教育には、大別すると2つの場面があります。

日本語学校での教育と、地域のボランティアなどによる教育であり、前者は留学を目的に来日した外国人を、後者は仕事や結婚などで来日した外国人を対象とする場合が多くなります。

そして、学習者のニーズに合わせてテキストを選択することが大切になります。

「日本語の初級学習には300時間が必要。週20時間で15週かかる」と岡宮さん。文型積み上げ型テキスト「みんなの日本語」を手に。

前者には「文法積み上げ型」が、後者には「モジュール型」が適しています。
文型積み上げ型テキストは言語構造を中心に、継続的に学習できるようになっており、前の課で学んだ項目を使って、新しい文法を学びます。

モジュール型テキストは、トピックごとに構成される一課完結型です。動詞やイ形容詞など幅広い文法項目が、第一課から出てきます。

行動面から日本語を学ぶ「モジュール型テキスト」

 

以上の講義とともに、「就職情報誌によく見られる日本語」を、外国人に分かりやすく書き換える、などのグループ実習を行いました。
「ノルマなしで働きやすい職場です」をどう表現するか、皆さん苦心しておりました。
岡宮さんは、「難しい語を説明するときは、日本語辞書をひくのも一つの方法」として、「ベネッセ社のチャレンジ小学国語辞典が、私には一番使い良かった」とのアドバイス。

質疑の時間、「学習者の達成度は、どのように見極めたらよいか」との質問に対して、「習った文章の一部をブランクにして、正しい品詞を入れることができるか、とか、『今日は何を食べましたか?』のように、習った文章が答となる質問をする」との回答を頂きました。

ところで、モジュール型テキスト説明の際、「第一課から、過去・非過去・肯定・否定が混在する文が出てくる」と、岡宮さんが説明していました。
最近私は、英文を作るとき、完了形などの「時制」に注意しているのですが、日本語には過去・非過去しかないという表現に触れて、日本語の時制の特徴を再認識しました。
この点を外国人に日本語を教えるときは工夫が必要なのか、興味のあるところです。

rain、rainy、raining の使い分けから見えてきた「時制」の問題>>>

伊那市 ストリート・ストーリー

研修のあとさきに散策した (飲み食いした)、伊那市・中心市街地の様子です。

 

本日は電車で、信濃大町 08:37 ⇒ 09:33 松本 09:39 ⇒ 10:09 岡谷 10:46 ⇒ 11:36 伊那市 へ参りました。

電車を降りた幾ばくかの乗客たちが、パラパラとそれぞれの方向に散ってしまうと、駅前のスクランブル交差点は晩秋の陽光の中にひっそりと静まり返り、人っ子一人見当たりません。

「失われた街…か」意味不明の呟きが思わず口から漏れ、私の頭の中では「トワイライト・ゾーン」のテーマが流れ始めました。

シャッターが下りた通りをヒタヒタ歩いて行くと、不思議なものに行き当たりました。
冗談なのか、本当に運行しているのか。是非とも乗ってみたいものです。

店内に「かわいい猫に」との看板が見えます。金魚や小鳥を売る店で、天敵である猫の餌まで販売しているとは。ペットショップだからいいのか。

研修を終えた後、夕闇迫る市街地を、再び探検してみました。

20年ほど前、仕事で伊那市に来る機会が多かった頃、「伊那市駅から伊那北駅まで、一区間まるごと飲み屋街」を目の当たりにして、度肝を抜かれたことがあります。

「伊那市は大阪に次いで、人口比率で日本で2番目に飲食店の多い街」という噂が、まことしやかに囁かれていました。
1950年代、南アルプスから天竜川に流れる支流の三峰川、その上流に美和ダムが建設された際、多くの作業員が集まったため、飲み屋の数が急激に数を増やしたということです。

しかし、それは昔の話。しかも、日曜日の午後4時とあっては…。

と、ローメンで有名な「万里」の隣に灯る、赤ちょうちんを発見。

ちょうちんに誘われ、カラリと戸を開けると、カウンターに陣取った酔客の視線が一斉に集まります。
「オウ、こっち空いてるぞ」

乱暴だけど温かな言葉に引かれ、カウンター奥の宿り木へ。
昭和な居酒屋に、ありし日のさんざめく街を回顧する、伊那市の宵。

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