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1泊500円の「リロバケーションズ」で考えたこと、隣人で人生が激変する可能性

「楽天カード」から一通のダイレクトメールが届きました。「お誕生月日のお客様限定企画」との殺し文句とともに添えられた案内状は、(株)リロバケーションズが運営するリゾート別荘に、1泊500円で体験宿泊ができるというものでした。しかも実際に宿泊すると、楽天のスーパーポイントが1,000P プレゼントされるというもの。

当然仕掛けられているであろう、会員権勧誘の罠は承知のうえ、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の覚悟で申し込みました。

 

 

申し込んだ施設は「南房総・勝浦」。

ウィラーエクスプレスの高速夜行バスで、長野駅東口を前夜 23:30 に出発しました。

「少しでも勝浦に近い場所まで」と考えて、「東京ディズニーシー」行きのバスを選んだのですが、車内はカップルばかりで、低い声のひそひそ話が、「あのオヤジもシーに行くの?」と囁いているかのようです。
(翌日、コロナウイルス対策の臨時休校が政府から要請され、ディズニーリゾートを運営する(株)オリエンタルランドは2月28日、リゾートを2月29日から3月15日まで休園する旨を発表しました)

「眺めが良いから」という理由で、最前列の座席をとるのが半ばクセになっているため、今回も1Aの席を確保したのですが、目の前に設置された冷蔵庫 (使用はされていません) に、つま先が当たってしまいます。

シートピッチは同じなのですが、他のシートは足先を前のシートの下に伸ばすことができます。角度にすればわずかですが、膝を余計に曲げなければならず、随分と窮屈です。エコノミー症候群が心配になり、太ももの血管に血栓が詰まっていくイメージ画像が、頭の中に浮かんできます。

しかも夜行バスのため窓はおろか、運転席と客席の間もぴっちりカーテンが閉められ、眺望などあったものではありません。

ならば、早々にふて寝を決め込み、終点まで爆睡したいのですが、車内にトイレ設備がないため、横川SA と三芳SA での休憩時間を逃さないようにしなければならず、なかなか油断ができません。

とはいえウィラー会員価格3,600円也で、寝ている間に運んでくれるのですから、ありがたいものです。ちなみに、帰路の新宿 07:10 発・長野 11:40 着の金曜日午前便は、2,300円でした。

バスは予定時刻の少し前にディズニーシーに到着。車内でしばらく待機してから、07:00の開門と同時に駐車場に入りました。

(左) ディズニーシーのバス発着所には、各地からの高速バス
(右) 足元が窮屈だった1A座席

「JR舞浜駅」「ディズニーランド」「ディズニーシー」ホテルエリアの「ベイサイド」の4駅を、モノレールの「ディズニーリゾートライン」が結んでおり、ディズニーシー駅てはたくさんのコインロッカーが設置されています(写真右奥) 。自販機のペットボトルは200円と、ややリゾート価格です。

リゾートラインの利用には運賃260円がかかるので、人波に逆らいながら、徒歩にてJR京葉線の舞浜駅を目指します。

15分ほどで舞浜駅に到着 (写真正面)

 

高架線がディズニーリゾートライン。

 

舞浜駅から見た駅前交差点。左折するとディズニーシー、右折するとディズニーランド。

舞浜駅から勝浦駅までは100km弱、通し運賃は1,690円。JR外房線の乗り換えとなる蘇我駅で、いったん途中下車することにしました。

蘇我駅は、千葉市都市計画マスタープランによる蘇我副都心の中心駅であり、1日平均乗車人員は千葉駅以南・以東では最多ということで、賑やかな駅前で朝食を、もしかしたら朝から海鮮丼、なんて展開も期待しながら、駅の階段を転げ落ちるように駆け下りました。

ところが駅前に人影はまばらで、ハンバーガーやうどん屋の他に朝から開いている飲食店は見当たりません。典型的なベッドタウンです。

ホテル・ドーミーインがあったので、ここならビジターで朝食をとれるかな、とまで考えたのですが、たまたま交差点の一画にイートインできるパン屋を見つけたので飛び込みました。

そしてここのパン屋が、旨い、安い、早い、メニューが豊富で組み合わせ自由自在、店員の愛想が良い、クレジットカードが使える、という、五拍子も六拍子も揃った神的な店だったのです。

バラ売りの食パン1枚45円に、煉瓦亭コロッケ80円をサンドし、アンパン50円とともに、本格的なカプチーノ250円を、窓際に設置されたカウンターで外の景色を眺めながら頂きました。〆て478円。パンをバスケットに入れて出してくれたのも粋でした。

マロンドは蘇我店の他に11店舗、千葉を中心に展開しているパン屋さんです。

「この店に来るためだけに、蘇我を再訪してもいいな」との満足感を抱えながら、外房線の安房鴨川(あわかもがわ)行き普通列車に乗り込みます。

舞浜・蘇我間とは打って変わって運行本数は少なくなり、駅に止まるたび乗客は減っていきます。流しのアコーディオン弾きがいたら必ずや、NHK「小さな旅」のテーマをリクエストするであろう空気の中、これで海が見えないのはいかにも惜しい、などと考えているうち、やがて海が近くなり、蘇我から1時間ほどで勝浦に到着。

駅からわずかに離れた勝浦港までぶらぶら歩く道すがら、目に留まった「割烹 中むら」にて昼食。

「カジキとマグロの食べ比べ丼」を頂きましたが、お通しでさえ思わず唸る、すべてが美味しい料理でした。

店を出て10分ほど坂道を登り、目的地である「勝浦ヒルトップホテル&レジデンス」にチェックイン。

15階建てマンションの14階の部屋に案内されます。ベランダが中庭を取り囲む贅沢な作りですが、吹き抜けはこの時期、寒いです。

 

部屋のドアを開けると突き当たりが、キッチン付きのリビング、右に二つの寝室、左にトイレ・浴室・ランドリーの水回りと、80㎡越えの間取りです。

壁の煉瓦や床の木材は、ビニールクロスやクッションフロアではなく、コンクリートの下地に本物が埋め込まれています。

部屋ではまず、30分ほどのDVDを視聴します。

福利厚生代行サービスを展開していたリログループは2000年にリゾート事業を開始、「別荘を使う分だけ所有する」というコンセプトの、オーナーシップ事業を展開しています。

国内に36、ハワイに1、ロスアンゼルスに1か所、リロバケーションズが保有する施設紹介のDVD を見終えると、担当者からシステムの具体的な説明を受けます。

システムの特徴である「ポイント制」ですが、利用時期や頻度に合わせて50~500ポイントの中から必要なポイント数を決定し、毎年ポイントの範囲内で、別荘施設を一生涯利用できるという仕組みです。

本人がいなくても、家族や友人が利用することができます。

本人は一生涯その権利を利用できますが、会員権のように売買はできず、取得から15年以内に死亡した場合に限り、他の人に引き継ぐことができます。ただし、引き継いだ人の利用期間は最長で15年とのことです。

ポイント数に応じて、入会金は200万円~780万円、年会費は8万円~17万円に設定されています。実際に利用する際はこのほかに、7泊まで一律8,880円のリネン・清掃費が必要となります。

例えば最小単位である50ポイントを購入する場合、入会金200万円と年会費8万円が必要です。
施設利用のポイント数は時期によって異なり、今日のような閑散期の平日ならば1泊8ポイントですが、トップシーズンともなると、18ポイントが必要になります。8万円の年会費を払って三泊も出来ない計算です。

安い料金で何回も利用出来るなら、別荘に行ってリゾートライフを楽しもうという、出掛けるモチベーションになりますが、利用上限が決まっているのなら、必要になったときにホテルを予約すればいいだけの話に思えます。

そんな気持ちを担当者に伝えると、「ホテルでは味わえない、1ランク上の別荘ライフに価値を見出せるかどうか、ということです。友人を招いてパーティーを開くとか」との返事。

ならば、貸別荘やコンドミニアムだってあるじゃない、と思っているうち、担当者は言葉をつなぎます。
「それぞれの考え方ということです。快適性や安全性を求めてベンツを買う人もいれば、軽自動車で十分、という人もいるわけですから」

そして「あとは体験宿泊をお楽しみください」と言い残し、拍子抜けするほどあっさりと退室していきました。

その通りですね。各地に別荘を持っている、という考えに満足感を得ることができるなら、入会は価値あるものでしょうし、他人がとやかく言うべきものでもありません。人はそれぞれなので、自分の価値観で他人を測ることもないでしょう。

それにしても、見事な引き際でした。

 

一人になった私は、リビングからベランダに出てみます。見下ろす瓦の波の向こうに、本物の海が光っています。

それにしても、隣に高層マンションが建っているため、せっかくのオーシャンビューが、襖と襖のすき間から除き見るような、いわば「家政婦は見た」的な視界になっているのです。
しかもマンションの窓には、破れた障子が散見されます。

ここは最上階に近いので、かろうじて水平線が見えますが、1階の温泉浴場に至っては、マンションのベランダから覗き下ろされないよう、スモークシールが窓にベッタリと貼り付けられています。

マンションが建てられる前は、湯船に浸かりながら太平洋の波を数えることができたでしょうに。

日照権は聞いたことがありますが、眺望権というものはあるのでしょうか。

建築基準法に違反していなければ、建設を止めることは難しいそうです。現在の日本の司法判断では、眺望や日照、プライバシーといった権利より、土地を利用する権利が優先される傾向があるようです。

このマンションがどのような経緯で建てられ、住民がどのような感情を抱いているのかは知る由もありませんが、隣人とのトラブルは全国いたるところで耳にしますし、自身が引っ越しをせざるを得ない状況に追い込まれる事例も聞きます。

左がリロバケーションズの施設。右が高層マンション。

リロの施設も被害を被っていましたが、道路から見上げると、民家にとってはリロの施設も相当の圧迫感があります。

住民の意にそぐわない建物の建設を防ぐため、法が定める建物の高さや用途の基準を上乗せする「協定」を前もって定めておくなど、事前の自衛策が必要に思えます。

そんなことも考えさせられた、今回の体験宿泊でした。

 

(左) 「ビッグマック」のような、分厚い「かき揚げ」が印象的な夕食。
(右) 朝食が鮭ではなくて、サバの味噌煮というのは千葉県の文化なのでしょうか?

このクオリティで宿泊代は本当に500円。

「勝浦ヒルトップ&レジデンス」の一部を、リロバケーションズが別荘施設として利用しているようです。

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