長野市内のビジネスホテル「日興」に宿泊したときのこと。
朝、トイレに座ってリキんでいると目についたのが、見出しの写真です。
トイレットペーパーの左側の壁に、何やら金具が…。
最初は何だかわからなかったのですが、紙巻器 (トイレットペーパーのホルダー) を取り付ける金具だと気付きました。
「なせ、金具だけが?」
思い出したのが、ネットで見た、以下のやり取り。
(質問) 世の中に完全な悪は存在しますか?
(回答)
「公衆トイレでトイレットペーパーが2つ並んでいることがあるんですけど、特に指示されなくても、善良なる市民は『少ない方から』使うはずです。
ところが、世の中にはこれを『多い方から使う人』がいるんですよ。
完全なる悪!!!
完全な悪が一人なら、まだ世界の平和は保たれます。
しかしこれが3人4人と連続した場合、『どちらも残り少ないけど、空にはなっていない』という危険状態が発生します。
空ではないので、清掃員の人も交換できません。
そして次に入った人は、ドカーン、ゲームオーバー、人生の終了。
これほどの純粋なる悪事が他にあろうか」
質問に対して、こうした答えを繰り出す回答者のセンスもなかなかのものですが、つまり、謎の金具の正体は、かつては2つあった紙巻器を、1つに減らした名残りなのですね。
1900年代、どこのホテルでも、トイレットペーパーはいつも新品でした。
巻きが少なくなったペーパーや、固形石鹸の残りは、従業員が自宅用に持ち帰っていたそうです。
ホテルによっては、「お客様用の備品を、従業員が流用するのは税務上問題」として、すべて廃棄するところもあったとか…。
最近は環境保護の意識が浸透し、紙巻器の1本にペーパーがタップリ残っていれば、スペアの紙巻器が空でも違和感を感じなくなりました。
このホテルでも経費節減のため、紙巻器が完全に空になったら交換することにしたのでしょう。
ところが「悪魔の所業」により、2個並んだトイレットペーパーが、両方とも同じ速度で痩せ細っていき、結局2本ともペーパーが少し残ったまま、交換せざるをえない状況が続いたと思われます。
「ええい、紙巻器は1本にして、スペアのペーパーは見えるところに置き、客に交換してもらおう」
そんな決断を、ホテル側が下したものと思えます。
以前、私が勤めていたホステルでも、紙巻器は1本で、スペアのペーパーは洗浄水を貯めるタンクの上に置かれていました。
見た目も良くなかったので、「紙巻器を2本にしたらどうでしょう」と、ドヤ顔でオーナーに提案しました。
ところが、「結局2本とも同じ時期に切れることになるので、スペアのペーパー1本は、どこかに置かざるをえない」と、あっさり却下されました。
当然のように少ない紙巻器から使っていた私にとって、多い方から使うのが一般的だという事実は、ちょっと衝撃的でした。
しかし、オーナーの指摘は的を得ていたのです。
行動や考え方は、人によって180°異なるものなのですね。
そこで…。
悪の道に人を走らせない、神の導きともいえるアイディアを発見したので、ご紹介しましょう。
右側の紙巻器に「お願い文」を1枚はさみ込むだけで、人々を正しい道へと誘導してくれます。
左の紙巻器が空になったら、お願い文をはずして、右の紙巻器を使えばいいのです。
客がトイレットペーパーを装着する手間は不要。
松代ロイヤルホテルのトイレで見つけました。
サービス業において、いかに安全かつ効率的に客を誘導するかは、大きな課題。
標識・表示の重要性を、再認識させられた出来事でした。