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旅館を開業する際の、消防法・旅館業法の規制

 

旅館に対する消防法の規制

北アルプス広域消防組合 大町消防署 黒雲さん

① 火災報知器

旅館の場合、300㎡以上なら自動火災報知設備が必要だが、300㎡未満なら「特定小規模施設用自動火災報知設備」を設置すればよい。

 

家庭の天井に付いている、住宅火災用警報器の高性能バージョンと思ってもらえばいい。

(民宿 世界食堂の場合なら) 各部屋1台ずつと、煙が上がってくるのをいち早く感知するため階段に1台、計5台設置すればよい。

親機と連動させること。10数万円くらいか。自分で設置することもできるが、現在、品薄状態。

「消防同意」とは別に、「設置届」の提出が必要。

消防同意とは、消防法令等に適合していることを消防長が、建築確認審査をする建築主事等に対して「同意」すること。

また、旅館業法の審査をする保健所に対しては、「消防法令適合通知書」が消防署から発行される。

【参考】 特定小規模施設用自動火災報知設備の感知器は、電池 (寿命約6年) で動作している。

 

② 誘導灯

(民宿 世界食堂の場合なら) 廊下は見通せる長さなので、2階廊下の階段降り口に1か所と、1階廊下の玄関出口に1か所、計2台設置すればよい。

【参考】 蓄電池(バッテリ)の寿命は4~6。 定期検査で、点灯時間が20分以下となった場合及び緑の充電モニタが点滅している場合には交換。

② 消火器

旅館であっても、延面積が150㎡未満ならば、消防法上の設置義務はない。

ただし「北アルプス広域連合火災予防条例」により、100㎡に1本ずつ、したがって (民宿 世界食堂の場合なら) 2階に1本、1階に1本、計2本設置いただきたい。

 

なお、飲食店は消防法上「延面積に関係なく、消火器を設置しなければならない建物」ではあるが、火を使用する設備を設けていないものおよび防火上有効な措置を講じたものは、延べ面積150㎡未満の場合、設置義務はない。

 

➃ 避難器具

収容人数により決定されるが、(民宿 世界食堂の場合なら)不要。

 

⑤ 防炎素材

カーテン・じゅうたんを使用する場合は、面積に関係なく防炎素材とする。

余談だが、障子には防炎の規制はない。ぱっと燃え尽きてしまうからよいのかもしれない(笑)

 

⑥ 防火管理者

収容人数が、家族を含めて30人以上になる場合に必要。年2回の避難訓練などを実施する。

 

飲食店に対する消防の規制

「北アルプス広域連合火災予防条例」第3条の4に、排気ダクト等の取り扱いに関する記載がある。

2022/10/18 北アルプス広域消防本部 大町消防署 黒雲係長

2023/09/05 北アルプス広域消防本部 総務課 長澤予防係長 0261-22-0168

建築基準法の防火に関する規制

① 旅館建物の構造

基本的に、壁は耐火・準耐火構造とする。ただし、「2階以下で延べ面積が300㎡未満」の旅館は「その他建築物」とされ、準耐火構造の要求がない。

 

② 旅館は「防火上主要な間仕切り壁」が必要となる建物。

この間仕切り壁は、建築基準法施行令114条に定められていることから、「114条区画」と呼ばれることもある。

しかし、そもそも旅館は上記①のごとく、自然と間仕切り壁の要件をクリアをしていることがほとんど。

問題となるのは、上記①「2階以下で延べ面積が300㎡未満」の旅館で、間仕切り壁の検討が必要になる。

 

間仕切壁は、火災時に人々が安全に避難できること、火災の急激な拡大を抑えること等を目的に、一定単位ごとの区画及び避難経路とその他の部分との区画をするもので、範囲は以下のとおり。

病院・診療所・児童福祉施設等、ホテル・旅館、下宿及び寄宿舎は、病室、就寝室等の相互間の壁で、3室以下かつ100㎡以下(100㎡を超える室にあってはこの限りでない。)に区画する壁及び病室や就寝室等と避難経路を区画する壁。

なお、間仕切り壁を免除できる規定があり、国土交通省告示860号に記されている

 

間仕切り壁を設置する場合、その方法は建築基準法施行令には記述されておらず、自治体の指針や「建築物の防火避難規定の解説(編集:日本建築行政会議」に書かれている。

 

一般的には、石こうボード12mmを二重張りにする。

このPBの間に、グラスウール・ロックウールを詰めれば、遮音効果も期待できる。

 

なお、遮音効果に関していえば、吉野石膏から「ソーラトン」という岩綿吸音板が発売されている。

重い材料には遮音効果、グラスウールなどのマットには吸音効果がある。

 

PBを二重張りにした場合は、ドアの収まりをうまく処理すること。

 

石こうボード表面の仕上げには、木を張っても構わない。

 

 

②内装制限

火を使用する調理室等の壁・天井は準不燃材料にする。

延べ面積200㎡以上の宿泊施設は、居室や避難経路も準不燃材以上にする。

200㎡以下の場合は、火気使用室(厨房・薪ストーブのあるホールなど)のみ内装制限がかかり、天井を準不燃材以上で仕上げなければならない。

壁は木材でもOKだが、板厚によって、下地材の仕様が限定される。

板厚10㎜以上あれば、下地は1m間隔の木材で構成されていればOK。

10㎜未満の場合、難燃材を下地として入れなければならない。

③排煙

旅館(建築基準法別表第1の特殊建築物) の場合、延べ面積が500㎡を超えるもの

天井から80cm以内の高さ。吹き抜けはどうする。

 

➃ 非常用照明

ホテルなど特殊建築物は、面積にかかわらず、居室と廊下「1ルクス以上の照度を30分のあいだ保つ」非常用照明を設置しなければならない。

【参考】 「電池内蔵型」なら電気回路の接続不要のため、設置も比較的簡単。

⑤ 廊下の幅

建築基準法施行令第119条で、廊下の幅について、地上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える階については、廊下の両側に居室があるものは 1.6m 以上、廊下の片側のみに居室があるものは 1.2m 以上と定めている。「1ルクス以上の照度を30分のあいだ保つ」

 

旅館業法の規制

大町保健所

 

旅館業の形態は3種類

  1. 旅館・ホテル営業
  2. 簡易宿所営業
  3. 下宿営業

 

旅館・ホテルと簡易宿所の違いは、個室の床面積と、多数人室 (ドミトリー) の床面積との比率。

個室の床面積が多数人室の床面積より大きければ「旅館・ホテル」

多数人室の床面積の方が大きければ「簡易宿所」

ただし、4部屋までの施設や、2段ベッドなどの階層式寝台を設置している施設は簡易宿所に該当する。

 

簡易宿所営業の構造設備基準は下記のとおり。

  • 客室数:規制なし
  • 客室床面積:延床面積33㎡以上(宿泊者数を10人未満とする場合には、3.3㎡に当該宿泊者の数を乗じて得た面積以上)
  • 玄関帳場(フロント)の設置:規制なし(国の法令上の規制はないが、条例で基準化しているケースがあり)
  • 入浴設備:当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること

 

「宿泊者と居住者のトイレは別にしなければいけないか?」→公衆衛生上は分けた方が好ましいが、法律上の規制はない

 

設計書ができた段階で来所いただきたい。部屋数や水栓数をチェックし、現地確認のうえ、着工いただくことになる。

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