黒幕、その名は「チョウ・ヨウキン」

右股関節の「人工股関節置換」手術を受けて3日が経ちました。

 

ベッドに腰かけた状態で、右膝を持ち上げようとするのだけれど、力が入らず、足裏は床に張り付いたまま、ピクリとも動きません。

 

朝の回診時、ドクターにそのことを訴えると、次のようなアドバイスが返ってきました。

 

「チョウヨウキンが働いていないんだね。

足を浮かそうとせず、つま先をつけたまま、かかとの上げ下げするところから始めてごらん。

チョウヨウキンが動くようになるから」

 

チョウ・ヨウキン?

 

♬ トラワヨ〜プサンハンへ〜

釜山港へ帰れ。

 

それはチョウ・ヨンピル。

 

…ではなくて「腸腰筋」

 

筋肉の名前の一つで、股関節を屈曲・外旋させる動きに大きく関与している。

 

腸腰筋とは…

「大腰筋」「腸骨筋」「小腰筋」の総称。

身体の重心位置を覆うように存在し、体幹を安定させています。

上半身と下半身をつないでいるため、歩き出しにも大きく関与しており、腸腰筋が低下すると、少しの段差でつまづいたり、転倒したりします。

そのため、介護予防や転倒防止の目的で、高齢者の腸腰筋トレーニングが注目されているそうです。

 

大腰筋

腸腰筋イコール大腰筋と思ってもよい。

腰椎の側面から太ももの付け根、深層部に伸びる筋肉。

 

腸骨筋

骨盤の深層にあり、腸骨窩(ちょうこつか)と腸骨の前面の出っ張り (下前腸骨棘) に起始部を持つ。

大腰筋の外側を走行、大腰筋とともに鼠径靱帯下の筋裂孔を経て小転子に停止する。

 

小腰筋

大腰筋から分束した筋肉で、大腰筋の補助の働きをする。

小腰筋を持っている人は半数以下程度。

 

筋肉は、テコの原理で関節を曲げる

四日前、私は股関節の手術を受けたわけですが、股関節悪化の原因の一つは、腸腰筋をうまく使っていなかったことにあるような気がします。

 

患部である股関節周辺の筋肉が弱っていたというより、その先の、股関節を動かす筋肉を使っていなかったために、股関節周辺の筋肉に負担をかけていたのではないか、と。

腸腰筋が短縮すると、腰椎過前屈になるといわれますが、まさに私には、腸骨前屈の症状がありました。

 

関節をテコの作用点に例えれば、力点は遠い方が、小さな力で動かすことができる。

股関節から離れている腰椎に起点を持つ、腸腰筋を上手に使うことで、股関節周辺部の負担を軽くできるのではないか。

 

勝手な判断ではありますが、術後のリハビリは、腸腰筋の強化に重点を置くことにしました。

 

ドクターのアドバイスどおり、足は床に着地したまま、小さな角度ながらも、股関節を曲げるトレーニングを開始。

腸腰筋を使うことを意識しながら。

 

 

そのかいあって、二日後には、膝を中空に浮かすことができるようになりました。

 

しかし、リハビリの理学療法士には指摘されてしまいます。

「腸腰筋がまだまだ弱いので、腰を丸めて腹筋の力で膝を持ち上げている」と。

 

重力に抗っている腸腰筋を伸ばさず、こわばった状態で放置していると、腰と脇腹から股の付け根に痛みが生じます。

この状態で無理に腹筋運動をすると、腰痛は悪化します。

 

腸腰筋を鍛えることで身体が丸くなるのを防ぎ、腰のS字カーブを維持し綺麗な姿勢を実現、腰痛改善が期待できるようです。

 

術後リハビリにおける腸腰筋の強化

術後自主トレメニューの一つ「股関節の曲げ伸ばし」

膝の曲げ伸ばしではなく、股関節の曲げ伸ばしを意識することが大切だと思います。

私は最初、膝の曲げ伸ばしを意識し、ハムストリングスを使うことに集中してしまいました。

股関節の曲げ伸ばしを意識することで、腸腰筋を使うことができます。

 

同じように、やはり術後自主トレメニューの一つ「ヒップリフト」も、ハムストリングスに集中していましたが、梨状筋に意識を持っていくのがいいようです。

使う筋肉を意識することで、効果に格段の差が生まれる気がします。

 

写真ではボールを使っていますが、不安定なためボールは使わず、ベッド上でかかとを滑らせるように行います。

簡単な動きですが、リハビリ一日目は、2回が精いっぱいでした。

 

 

腸腰筋の強化法

ライイングレッグレイズ

床に仰向けになり股関節を屈曲、自分の両脚の重さを負荷として鍛える。

  1. 床に両脚を伸ばして仰向けになります
  2. 腰を支点に、ゆっくりと両脚を伸ばしたまま上げていきます
  3. その後、ゆっくりと両脚を下ろしていき、これを繰り返します

 

Vシットキープ

股関節を屈曲させた状態を維持することで、筋肉が伸びも縮みもしない状態になり、腸腰筋が鍛えられる。

  1. 両脚を真っ直ぐにして床に仰向けになります
  2. 地面に対して45度程度になるまで両脚と上半身を上げていきます
  3. この状態を3秒キープ

 

スタンディング・ニーレイズ

立った状態で脚を高く上げていき、股関節の屈曲動作を行なう。

  1. 姿勢を真っ直ぐにして両脚で立ちます
  2. 片脚を持ち上げた状態を3秒キープします
  3. その後、上げた脚をゆっくりと戻していき、これを繰り返します

レッグスロー

レッグレイズの要領で上げた両脚を、トレーニングパートナーに押してもらい、その力に抵抗しながらゆっくりと床に両脚を下ろしていく。

筋肉の繊維が伸びながらも力を発揮する「エキセントリック収縮」を利用したトレーニング。

  1. パートナーの両脚のくるぶしを握った状態で仰向けになります
  2. レッグレイズの要領で両脚を伸ばしたまま上げていきます
  3. 上げた両脚をパートナーに前方へ押してもらいます
  4. その力に抵抗するように、両脚をゆっくりと床へ下ろしていき、これを繰り返します

 

腸腰筋のストレッチ

強化するだけではなく、腸腰筋を緩めることも大切。

しかし、腸腰筋はインナーマッスルのため、マッサージやツボ押しでこわばりをほぐすのは難しい。

 

そのため、ストレッチや筋トレでほぐすのがおすすめ。

股関節屈曲とは逆の動作です。

入浴後など体温が温まり血行が促進して、筋肉が緩みやすい時に定期的に行いましょう。

 

私は術後5日目、 腸腰筋に強いこわばりを感じたのですが、ストレッチは禁忌と思い、やめました。

 

理学療法士にそのことを話したところ、左を下に横向きの状態で、まっすぐ伸ばした右足を、後方に少し反らしてくれました。

とても気持ちが良かったです。

 

 

ローランジ

ヨガでいうところの「月のポーズ (チャンドラ・アーサナ) 」

腸腰筋にはストレッチ効果となりますが、腰・お尻・腹筋・太もも・背中の筋力トレーニングとしても有効。

  1. 立った状態で前足の膝を90度に曲げ、腰をしっかりと落として後ろ足の膝は床につけます
  2. 上半身を起こし、重心を前方にかけます
  3. 両手を天井に向けて上げ、体を少し後ろに反らしながら、腸腰筋を伸ばします(左右で行なう)

 

ヒップリフト

大殿筋を中心に、腰回りや太ももの筋肉を鍛える筋力トレーニングですが、腸腰筋に対してはストレッチの動きとなります。

  1. 床に仰向けに寝ます
  2. 膝を曲げ、かかとをお尻のほうに引き寄せます。
  3. お尻の筋肉と太もも裏の筋肉 (ハムストリング) にギュッと力を入れて骨盤を床から浮かせます
  4. ゆっくりと戻していき、これを繰り返します (1セット10回)
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