毎日のリハビリで交わす、理学療法士さんとの会話は、参考になる内容が多いです。
私は、筋肉というものは縮むときに力を必要とし、伸びるときは、裏側の筋肉が縮む力で、受動的に伸ばされていくものだと思っていました。
ところが、療法士さん曰く「筋肉は伸びるときも、力を必要とする」
例として、上腕二頭筋 (力こぶ) を鍛える「バイセプスカール (Biceps Curl)」で考えてみます。
ダンベルを上げるとき、上腕二頭筋 (力こぶ) は収縮して、見た目にも力が入っているのがわかります。
そして、ダンベルを下ろすとき、つまり肘を伸ばすときも、ブレーキをかけるように、上腕二頭筋は収縮しながら伸びていきます。
上腕二頭筋の収縮力が働かなければ、カクンと、一気に肘が伸びてしまいます。
考えてみれば、その通りですね。
そして意外にも、肘を伸ばすときの方が、曲げる時よりも1.2〜1.4倍強い力を発揮できるそうです。
肘を曲げるときの筋収縮を求心性収縮(短縮性収縮)といい、この求心性収縮を起こさせる筋トレを「ポジティブ動作」と呼びます。
逆に、肘を伸ばすときの筋収縮を遠心性収縮(伸長性収縮)といい、「ネガティブ動作」と呼びます。
筋肉が伸びも縮みもせず、長さが変わらない状態で力を発揮する状態は「アイソメトリック」です。
ネガティブ動作の例は、上腕四頭筋 (力こぶでない側) に働く、懸垂の腕を伸ばす動作・腕立て伏せの体を下ろす動作、大腿四頭筋 (太もも表側) に働く、スクワットの腰を下ろす動作などです。
ネガティブ動作の方が、より大きな負荷に耐えることができるということは、ポジティブで力尽きても、ネガティブならまだできるということ。
これを利用したのが、筋トレで使われる「チーティング (cheating= ごまかし)」というテクニック。
上腕でダンベルカールを行い、力つきたところで、足や上半身の反動を使って (←これがチーティング) 持ち上げる。下ろす時はゆっくりとコントロールしながら下ろす。
下ろす時に力を使って、コントロールできなくなるまで繰り返します。
これが、チーティングを使って最後まで追い込む方法です。
ポイントは、ゆっくり、じわじわ動くこと。
逆に、ポジティブ動作は、少し早い動きで。
筋肉が大きくなるメカニズムは、筋肉が傷つき回復するとき、以前より大きい筋肉になろうとするため、といわれます。
筋肉へのダメージを効果的に与えられるネガティブトレーニングが、筋肥大に適しているとされる理由です。
間違った筋トレは筋肉を硬くする
ただし、回復しないうちに筋トレを継続すると、筋肉は硬くなってしまいます。
筋肉はタンパク質やビタミンなどが、時間をかけて修復しますが、回復していない状態で負荷がかかると、体は大慌てで筋肉を修復させます。
新しい筋線維を作って回復させるよりも、傷ついた部分をコラーゲンで埋めて、古く傷ついた筋線維を再利用するのです。
その結果、硬い筋肉が出来上がることに。
毎日鍛えるボディビルダーも、日によって鍛える筋肉を変えています。
闘将アニマル浜口に学ぶ筋トレ法
筋トレというと思い出すのが、もう40年近く前の週刊誌に掲載されていた「闘将アニマル浜口流 ビルトアップ術」という記事。
内容は、1987年にプロレスラーを引退し、浅草にレスリング道場を開いたアニマル浜口に取材したもの。
後に、娘の京子が出場した2004年アテネオリンピック時、「気合だー」と連呼する姿で広く知られる存在となる浜さんだが、筋トレのポイントをついた記事の内容が、今でも頭に残っています。
いわく…
- カッコいい身体になるには、筋力・持久力・柔軟性の三要素を押さえて、食事のとり方をきちっとすれば、簡単だ。
- 筋力運動というのは常に、表側の筋肉を使ったら裏側の筋肉も使う。筋肉は骨を境に拮抗しているので、表裏の筋肉運動をすることで、より筋力をアップできる。
- プッシュアップのポイントは、胸の筋肉を最大限伸ばすこと。
- スクワットは持久力 (心肺機能) を高め、足腰を強化する最も効率のいい運動だ。このポイントは、腰を痛めないために顔を正面に向けて行う。
…など。
退院したらリハビリを兼ねたトレーニングができるよう、正しいスクワットの方法を、今から勉強しておくことにしよう。
正しいスクワット法
筋トレビッグ3の1つに数えられ、下半身を総合的に鍛えることができるスクワット。
スクワットのメインターゲットは、太ももの表側にある「大腿四頭筋」
私は、太ももの裏側「ハムストリングス」に一番効くと思っていましたが、前述のネガティブ動作の理論からすれば、ゆっくりしゃがみ込むことで、太もも表側が伸ばされるわけですね。
ハムストリングスには「デッドリフト」の方が効くようです。
また、足を広げてガニ股の姿勢で行う「ワイドスクワット」なら、腸腰筋に効かせることができます。
浜さんが言うとおり、どんなトレーニングでも可動域(筋肉を動かす範囲)を大きくすることは、負荷を高める上で非常に重要。
そこで、スクワットの場合、太ももとふくらはぎがくっつくほど思い切り体を下げて (フルボトム)、ハムストリングスを収縮させることが効果的と言われます。
もう一つ、膝関節で体を支える形になってしまうと、大腿四頭筋やハムストリングスへの負荷が下がるので、膝を爪先よりも前に出さないように、とも言われます。
ただし、膝を出さないことばかりに意識が行くとボトムでスネが立ち、それでもフルにしゃがもうとすれば、重心のバランスを取るために腿が左右に割れて上体が前に倒れ込み、股関節の屈曲角度が大きくなります。
ところが、トレーニングを始めたばかりの頃はハムストリングスや足首の柔軟性が低く、股関節の可動域も狭いので、骨盤を後傾させて荷重を逃がすことになり、トップで作った腰椎のアーチが消えるうえ、骨盤が急激に後傾してしまいます。腰を痛めます。
ボトムの最後の瞬間に骨盤が後傾して、尻がパクンと下を向くこの動きを「バット・ウインク (尻の瞬き) 」と呼び、スクワットでの腰の故障の最も大きな原因となります。
足首とハムストリングスの柔軟性が養われるまでは、バット・ウインクが生じるフォームと深さのしゃがみこみは避けましょう。
自身の体格と能力に合ったフォームが肝心ですね。